TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月〜金曜7:00〜)。「モニフラZ議会」では、世界で3,000を超える自治体が導入している“市民参加型予算”について、Z世代の論客が議論しました。

◆世界で導入されている市民参加型予算とは?

7月に就任した杉並区の岸本聡子区長が前向きに検討している「市民参加型予算」。これは行政の予算編成に市民の声を直接届けることができる仕組みで、すでに世界では3,000を超える自治体が導入しています。

“市民参加型予算”が拡大する契機となったのはブラジルのポルト・アレグレ市で、同市では1989年から市民参加型予算を導入。現在は終了していますが、当時は住民が要望する公共事業の優先順位を決め、それを議会に上げ決定することで公共事業の半分が市民参加型予算になり、貧困地域のインフラが大きく改善したということです。

そして、フランスのパリでも2014年から2020年にかけて市民参加型予算に年間99億円をつけ、市民から事業アイデアを募集。そのなかから市が選定し、その後に住民投票で実施を決めていました。実際、運河を活用してプールを作る取り組みに6億8,000万円、歩道の緑化に7,500万円、公園の遊び場の改修に2,700万円の予算がつけられています。

こうした市民参加型予算に対し、キャスターの堀潤は「直接民主制と間接民主制のハイブリッド、いいところを集めた感じ」と率直な印象を語ります。

自身も推進派としつつも「事例がさも崇高に語られるが、必ずしもポジティブなものだけではない」と話すのは、アフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さん。

「その裏側や導入の契機をみなさんに知ってほしい」と導入の契機には政治的な思惑があると指摘します。

ポルト・アレグレ市の場合、当時の市長が多くの反対派を抱え、議会も市民も大きく分裂。上手くまとめることができず、阿部さん曰く、住民の声を聞かざるを得なかったそう。また、住民が意見を出し合うというよりも、自治体ごとに予算を決める会議の代表を選び出す、むしろ選挙と同じような感じだったようで「市民参加型予算を導入するにしても、どんな制度設計で何を大切にするのか決めてからじゃないと定着しない。ポルト・アレグレ市も結局今はやっていない」と注意を促します。

政治プラットフォーム「PoliPoli」代表の伊藤和真さんも賛成派。市民参加型予算のメリットについて「政策プロセスに参加すること」を挙げます。例えば、アイデアを出し、それが政策として実現すると参加者のモチベーションになり、政治や行政に関わったという成功体験を得ることができると伊藤さん。

そしてもうひとつ、「時代背景として複雑で多様化している社会のなか、代議士や議会にだけ意思決定を任せることが限界にきている。一部のプロジェクトは直接参加するということはある程度必要」と主張します。

さらに伊藤さんは、日本で市民参加型予算を導入する難しさも言及。「予算編成の話をしても、おそらく数千人、数万人しか参加しない。そうなると、なぜその人たちの意見を反映しないといけないのか、全体の意見を聞いたのか、ネットで公募した場合、ネットを使えない高齢者の意見は反映できているのかなど反対意見も結構出てくると思う」とし、その打開策として自治体や首長のリーダーシップを挙げます。

Fridays For Future Tokyoオーガナイザーの黒部睦さんは、市民参加型予算を導入する場合、人選は「無作為抽出と募集」の両方を行うべきと主張。

そうすることでネットを使えない層も参加可能で、「普段、経済や予算編成などのことを考えていない人が参加できる機会は絶対にあったほうがいい」と黒部さん。そして、無作為抽出となると誰もが選ばれる可能性が生まれ、そうなると教育の必要性も。「裁判員制度のように、教育もしっかりされるようになれば、より予算のことも自分ごとになり、当事者意識が生まれると思う」と期待します。

◆市民参加型予算はすでに日本の一部地域で導入中

現状、日本でも東京都や三重県、そして一部の自治体で市民参加型予算は導入されています。東京都では2017年度から「事業提案制度」として実施。2021年度には対象年齢が18歳から15歳に引き下げられ、2022年には高校生の提案も採用されています。

高校生も参加できることに対して、黒部さんは「すごく良い」と高く評価。普段、高校生に啓蒙活動を行う身としては、「(社会)参加しているという意識を持った人がたくさん生まれることで、私たちも働きかけ甲斐がある」と意気に感じている様子。

ここで伊藤さんは「デジタル民主主義」について言及。「やはり、直接民主制と間接民主制の中間、いいとこ取りはこれから必要になってくる民主主義であり、複雑で多様化しているなかで、全て議会に任せるのではなく、プロジェクトベースなどでしっかり意見を言える場が必要」と主張します。

そう述べる一方で、伊藤さんは行政とコミュニケーションするなかで市民参加の難しさも重々感じているそう。なぜなら、意見募集ですら炎上する可能性があるほか、一部の自治体では市民から届いたコメントや意見は全部反映しなければいけないという考えがまだまだあるからで「まずは開かれた行政というところからリーダーシップを持って取り組んでほしいし、国民側もしっかりとそこを求めていく。一歩一歩やることが必要」と訴えます。

◆すでに一部では課題も…その改善策とは?

市民参加型予算制度について、街頭の声を聞いてみると「参加したほうが、自分が望む社会に変えることができるかなと思う」(20歳 女性)、「そういうことをしていると、知る機会を増やすことが一番良い」(21歳 男性)、「自分の意見でお金や社会が動くのは責任が重い」(22歳 女性)、「一人ひとりに聞くのではなく、クラスや学校に聞いたらハードルも下がっていくと思う」(21歳 女性)などさまざまな意見が寄せられました。

市民参加型予算をすでに導入した地域では、次のような事例も。

三重県では2020年度から「県民参加型予算」を導入。県民が事業提案をし、そのなかから投票されたものに予算を配分し、事業化する仕組みでしたが、投票は有権者全員ができるものの、2020年度は6,505票、2021年度は4,361票と投票数はかなり少なめ。「少ない票による多数決で、事業を決めていいのか」という声があり、2022年度は、事業提案などは継続しているものの投票は取りやめに。専門家は「市民に恩恵が少なく、理解が進んでいない。行政は手続きが煩雑で人材も不足している。また、首長の交代などで終了するケースもある」としています。

では、いかにしてこうした課題を乗り越えていくべきなのか。阿部さんは「パリではひとり8票あったので、配分を自分で考えられた。投票もひとつして終わり、ひとつだけに決めるのではなく、(パリの方式なら)好きにできるのかなと思う」と海外の事例をもとに解決案を提示。

伊藤さんは「難しく考えてしまうが、(事業提案は)個人的なものでいいと思う」と自身の見解を示し、「そういうものを集めることで、ある程度意思決定していくのが政治。個人的なこともカジュアルに意見を出すべき」と持論を述べます。また、市民参加型予算を導入したい思いがあったとしても「失敗が怖い」と行政側の気持ちを慮り、「国民も厳しすぎない目、ある程度チャレンジ精神を持つと進んでいくと思う」とも。

番組Twitterには「新しいことをやるにはエネルギーが必要」、「廃止された例を見ると“でしょうね感”」、「せっかく導入されても、市民の関心が薄いのはもったいない」といった声が寄せられるなか、堀は過去に自治体のお金の使い方で成功事例を取材したという島根県隠岐郡海士町の取り組みを紹介。

海士町では、ふるさと納税で集まったお金を議会にかけて事業化するのではなく、海士町未来共創基金としてプールしていたそう。そして、それを使うためにはプレゼンが必要となるのですが、その舞台となるのは、海士町で長年続く、みんなが集まるお祭りの場。そこで町の人たちの合意を得ると、予算が獲得できるという斬新で面白い取り組みだったと振り返ります。

また、堀は「行政や自治体というのも、これは大きな主語だと思う」と語り、「そもそも、私たちが暮らす自治体の範囲はどれぐらいが適切なのか考えてみてもいいのではないか」との提案も。そして、「数十万人の自治体と数千人規模の自治体では参加型の仕組みのあり方も設計が変わってくると思う」と指摘します。

Z議会を代表し、伊藤さんは再度「デジタル民主主義」を提言。自治体と一緒に取り組みを経験したときに「有識者と当事者の声がすごく大事」と実感したと言い、「やはり(誰もが)カジュアルに意見を出してほしい」と希望。そして、その先には意見を出した人だけでなく、例えばアンケートやSNSなどから市民の考えを汲み取って、「(そこから)意思決定をしていくやり方も、今後起こってくるのではないか」と予見していました。

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