TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月〜金曜7:00〜)。8月10日(水)放送の「フラトピ!」のコーナーでは、原爆投下から77年を迎えた“広島”を、キャスターの堀潤が取材しました。

◆「記憶の解凍」アプリとともに広島へ

1945年8月6日、広島に人類史上初めて原子爆弾が投下されました。その規模は凄まじく、広島市内の爆心地から2km以内の建物はほぼ全て破壊され、当時の広島市内の建物の約9割が壊滅的な被害を受けました。

それから77年、今年も8月6日に広島・平和公園では約2,800人の被爆者・遺族が参列するなか、平和記念式典が行われました。平和宣言を行った広島市の松井市長は、核抑止論の広がりに警鐘を鳴らし、核廃絶を強く訴えました。

一方で、初の広島県出身総理として出席した岸田首相は、核兵器のない世界という理想に向け努力していくとしたものの、核兵器禁止条約への言及はありませんでした。

平和記念式典の前日、堀は平和教育を研究する東京大学3年生の庭田杏珠さんとともに平和記念公園へ。

広島県出身の庭田さんは白黒写真をAIでカラー化し、当時の記憶や思いなどを呼び起こす「記憶の解凍」プロジェクトを行っており、この日はそのアプリを見ながら公園内を巡ります。

平和記念公園内にはかつて「無得幼稚園」という幼稚園があり、アプリでは当時の写真がカラー化。それを見た堀は「今、我々が見ているのは公園ですけど、(かつては)子どもたちの声・暮らし・学びがここにあったんだね」とありし日の姿を想像していました。こうして当時の地図や写真と照らし合わせることで、今は公園となっているこの場所に、家屋やお店などが立ち並ぶ暮らしがあったことを感じ取ることができます。

続いて訪れたのは、観光案内所や休憩所となっているレストハウス。

この建物は原爆の被害を受けた「被爆建物」で、当時の面影を残した状態で改修。色の異なる部分が被爆前から残っている当時の外壁ですが、堀はそこに直接触れ、当時に思いを馳せます。

建物の中も被爆当時の状態で残された階段や建物の基礎部分などを見ることができます。3階には、庭田さんが行っているプロジェクト「記憶の解凍」の展示が。そこには、庭田さんたちが継承し、残した写真が紹介されています。

平和記念公園にはかつて“中島地区”という繁華街があり、この展示では当時の様子がうかがえます。

庭田さんが「一人ひとりの日常があり、それが失われた場所ということを想像しながら歩いてもらえる展示になっていると思う」と語ると、堀も「自分たちが今、生きている世界観と同じような色合いで見える展示がここにあるというのは大きな価値ですね」と共感。

なお、3階には庭田さんの展示のほか、被爆前の中島地区周辺を再現したジオラマが展示されています。

このレストハウスは、被爆前は「大正屋呉服店」という建物だったそうですが、庭田さんにとってここは大切な場所。

「被爆前から残る建物は本当に少ないので、このレストハウスに来るたびに原爆が投下される前の『大正屋呉服店』の姿や日常……電気も当時の感じを再現されていますし、建物の壁とかも残っていますし、本当に(当時の)日常というものを体感できる場所という気がします」と思いを語ります。

公園を巡った後には「おりづるタワー」へ。その展望台からは公園内を一望することができます。

そこで堀は「こうして受け継いで歴史を残そう、記憶を残そうってこういうことを“不断の努力”と言うんでしょうね……」としみじみ語ると、庭田さんも納得。そして、「戦争を体験していない世代がこれからどのように(戦争の記憶)伝えていくのか考えたときに、アプリだったり、カラー化写真とかいろいろなものを、五感を通して、自分ごととして想像してもらうというのが、本当に大切だなと思います」と今後の展望を語ります。

◆人と人との出会い・交流が平和に向けての歩みに

今回、堀は新たな「記憶の解凍」の瞬間に立ち会うことができました。それは平和記念式典の後、地元の方が主催する慰霊祭を見学したときのこと。参加していた遺族の渡辺宣子さんに話を聞いていると、なんと被爆前の広島を撮影した写真を持っていることが明らかに。しかも、独り身の渡辺さんはその写真を捨てようかと思っていたところだったと話します。それを聞いた庭田さんは「ぜひ(写真を)拝見したいです」と望み、写真が「記憶の解凍」プロジェクトに伝わることに。

堀は「捨てられるかもしれなかった写真の次の展開がこれから始まろうとしている」と今後に夢を膨らませつつ、「庭田さんがいなかったらどこにも置き所がなかったし、この写真の意味はそっと胸に思い出としてしまったまま記録には残らなかったのかもしれない。人のつながりはやはり捨てたものじゃないというか、人がつながらないと平和に向けての歩みは進まないのかもしれない。だから絶対に交流を諦めてはいけないし、絶対に交流を絶ってはいけない」と率直な思いを吐露。

スタジオでは、インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんが「日本に住んでいるけれど、全然知らないことがたくさんあるんだろうなと思って、私も(広島に)行ってみたいと思った」と感想を述べます。一方で「核兵器禁止条約をはじめ、核廃絶に向けて、日本は欧米や核保有国とは違うリードの仕方を考えていく必要がある」と核に対する自身の意見を強調。

株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんは「平和教育の話をするときにいつも思っていたが、自分の思った感想などをなかなかシェアする場所がない」と言い、「率直な思いなどがもっと話せるといいんだろうなと改めて思った」と語りました。

堀とともに広島を取材した庭田さんは、「戦争体験者の方が体験したこと、大好きな家族が亡くなったりしたことを私たちは同じように想像できないかもしれないが、二度と戦争を起こしてほしくない、大好きな人を失いたくないという気持ちは同じ」と力強く訴えます。そして「そういう戦争体験者の思いや記憶、日常を私たちが今の暮らしと重ね合わせて想像し、アプリを使いながら追体験することを通して、(戦争の体験が)自分ごととして捉えられると思う」と思いを述べました。

今回、写真を提供してくれた渡辺さんは、AI技術でカラー化した写真を見て涙を流しながら喜んでいたそうで「それがすごく嬉しかった」と庭田さん。そして、すでにその写真からは新たな事実もわかり「それも実際に動いてみないとわからなかった。堀さんのコメントにもあったが、人と人とのつながりは捨てたものじゃないことは、私自身体感している」と涙ながらに語ります。

庭田さんは東大大学院の渡邉英徳教授とともに著書「AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争」(光文社新書)を刊行していますが、これは「戦争という大きな歴史としてではなく、一人ひとりから私が聞き取りをし、長い時間をかけて記憶の色というものを再現してきたもの」と言い、「これを読んでくださった方が、受け取り手が発信者になってほしい」と願っていました。

※この番組の記事一覧を見る <番組概要>番組名:堀潤モーニングFLAG放送日時:毎週月〜金曜 7:00〜8:00 「エムキャス」でも同時配信キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/番組Twitter:@morning_flag