【テレヴィジョン/マーキー・ムーン(1977年)】

 77年2月にリリースされたテレヴィジョンの1stアルバム。ニューヨーク・パンクを代表すると同時にパンクというジャンルを超えた歴史的名盤。文学的な詩と緊張感に満ちたツインギターサウンドは当時のロックシーンに衝撃を与えた。

 A面最後に収録された表題曲の「マーキー・ムーン」は実に9分58秒。しかし時間を感じさせない音で、フロントマンのトム・ヴァーレインとリチャード・ロイドの歪みながらも美しい旋律を持ったツインギターはまさに“落雷”のようであった。当時中学生だった私は聴き終えた後にしばらくぼう然として動けなかったのを覚えている。今でも永遠の名曲とされ、後のニューウエーブ、グランジ、オルタナロックにも多大な影響を与えた。

 アナログ盤では、ギターの音の彫りが深く、ガレージで額を突き合わせて録音したような当時のバンドの緊張感がCDよりもダイレクトに伝わってくる。今でもこの盤を回す際は、他のことができず思わず正座してしまう。

 しかし90年代に入ってCD化されると、フェードアウトしていた同曲が、エンディングまで演奏して終わる別テイク(10分40秒)に差し変わっていて腰を抜かした。

 しかも最近発売された重量アナログ盤2枚組ではオリジナルが収録されていない。歴史を変えてはいけない。そんな事情もあってぜひオリジナルで聴きたい名作だ。バンドはわずか1年強で解散したが2nd「アドヴェンチャー」の「デイズ」や本作の「ヴィーナス」など美しくメロディアスな曲も残している。