【フィギュア】高橋大輔「世界選手権辞退」がフィギュア界に与える影響

“大ちゃん”健在は証明した。フィギュアスケート全日本選手権最終日(24日、大阪・東和薬品ラクタブドーム)の男子フリーで、今季から現役復帰した2010年バンクーバー五輪銅メダルでショートプログラム(SP)2位の高橋大輔(32=関大KFSC)が151・10点で合計239・62点。3連覇した平昌五輪銀メダルの宇野昌磨(21=トヨタ自動車)には及ばなかったが、2位と健闘した。一方で来年3月の世界選手権(さいたまスーパーアリーナ)の代表を辞退。この判断がフィギュア界に与える影響とは――。

 これが千両役者の存在感というものか。五輪2連覇の羽生結弦(24=ANA)がケガで不在の今大会、強烈な光を放ったのが高橋だ。2014年ソチ五輪を最後に引退したが、昨年の全日本選手権で躍動する後輩たちを見て心が熱くなり、現役復帰を決意。10年の世界選手権V、12年のGPファイナルVと実績は言うまでもないが、人気面でも他の追随を許さない。声援や拍手の大きさは圧倒的だ。

 フリー当日の公式練習に登場すると会場は「大ちゃん!」の大合唱。フリー本番の演技が始まれば、観客席はカラフルな応援タオルで彩られる。「結果を求められてないし、自分のためにやる」という言葉とは裏腹に、終わってみれば宇野に次ぐ2位。疲れが出たフリーの後半にジャンプでミスが続いたが、フィギュア関係者が「始まって3秒で引き込まれる」と言う、表現力の高さでファンを魅了した。

 これで世界選手権の代表入りか?と思われたが、試合後に発表された代表選手に高橋の名はなく、日本スケート連盟からの打診を辞退したことを明かした。その理由を自分の口から説明したいと申し出た高橋は、代表選手会見の後に単独で緊急会見を行い「行きたい気持ちはヤマヤマですが、世界で戦う覚悟が持ち切れなかったのが大きな理由。覚悟が持てないのに出るべきではない」と話した。さらに「今日の演技がすごく悔しかった。すっきり終わりたい」と現役を続行する意向を示した上で「日本のスケートが盛り上がっていくためには若い選手が舞台を経験する必要性がある。冷静に考えて僕じゃない。希望がある選手がいろんな経験をすることが大事」と言葉を選びながら真摯に語った。

 自らの向上心を持ちつつ、後進への配慮も忘れない――。これ以上ない英断と言えるが、前述した「人気面」を考慮すると、フィギュア界には大きな“痛手”だ。

 5年ぶりの出場となった今大会、会場の特設売店では大ちゃんグッズが飛ぶように売れた。欠場中の羽生にも特設ブースが設けられ、こちらも大盛況だったが、グッズ販売担当者によると「最近は宇野選手も売れていて、羽生選手のオルゴールは生産が追いつかない。でも、高橋選手が表紙の雑誌やカレンダーも負けずに売れていますね」。

 チケットは最終日(24日)の全5800席が完売し、数日前から「24日のチケットを譲ってください」と手書きのプラカードを持って最寄り駅の出口で立つファンが十数人いたほどだ。もちろんこれも“大ちゃん効果”だろう。現状は高橋、羽生が人気を二分し、そこに上昇中の宇野が割って入る図式と言える。もし高橋が辞退しなければ、日本開催の世界選手権に“ビッグ3”が勢揃いして、そこに女子で話題を集める紀平梨花(16=関大KFSC)も加わる。史上空前とも言える盛り上がりは必至だったのだが…。

 来年以降も高橋が現役を続けるのは既定路線。とはいえ、いつまでもビッグ3頼みでいては、22年北京五輪へ向けて心もとない。大事なのは現役復帰したレジェンドに表彰台を奪われた若手たちが、どう奮起するのか。それが代表辞退に隠された真のメッセージなのかもしれない。


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