昨年3月、青森県八戸市の「みちのく記念病院」で入院患者の男性=当時(73)=が殺害された事件で、殺人罪に問われた本籍五戸町、住所不定、無職の被告の男(58)の裁判員裁判の論告求刑公判が17日、青森地裁であった。検察側は懲役18年を求刑。弁護側は心神喪失状態だったとして無罪を主張し、結審した。判決は7月1日。

 公判の争点は責任能力の有無や程度。被告の非社会性パーソナリティー障害が、責任能力に影響したかが焦点となった。

 検察側は論告で、病室に人けがなくなるのを見計らい、手元にあった歯ブラシなどを使って犯行に及んだ点について「計画的で合理的に行動しており、正常な心理状態だった」と指摘。罪を犯せば警察に通報され病院から出られる−などと考え、殺人を計画した動機は「身勝手で、生命軽視の姿勢が甚だしい」と非難した。

 一方の弁護側は、被告は当時、非社会性パーソナリティー障害の影響で善悪の判断ができず、犯行を思いとどまれなかった−と強調。「被告に必要なのは処罰ではなく治療で、無罪にすべきだ」と訴えた。

 論告に先立ち、検察側が遺族の意見陳述書を朗読。死亡した男性の妻は「(遺体は)顔中紫色で、『痛い痛い』と訴えていた。どれだけ痛く苦しかったか被告に想像してほしい。できるだけ重い刑罰を科してください」と求めた。

 被告は最終陳述で「一生自分がやった罪を償っていきたい。どうもすみませんでした」と語った。