青森県内で今年、ツキノワグマの目撃や被害報告が相次いでいることを受け、東奥日報が県内40市町村に被害防止に向けた課題を尋ねたところ、クマを駆除する狩猟者(ハンター)不足や高齢化を挙げた市町村が半数以上の23に上った。人材確保のための支援を国や県に求める自治体も多かった。

 「ハンターの平均年齢は67歳。近い将来ハンター不足になる可能性が非常に高い」(五戸町農林課の庭田大輔主事)、「町内にハンターは2人だけ。長期的に見れば人手不足になる可能性がある」(大間町産業振興課の伊藤満治課長補佐)。

 実際にクマを駆除する猟友会員の高齢化が多くの自治体で共通した課題となっている。その影響で「出動回数に限度がある」と大鰐町農林課の山田翔太係長。まだ出没件数が少ない五所川原市の川口均農林政策課長は「クマを捕獲する事態があった時に必要な人員を確保できるか」と懸念を口にした。

 高齢化による担い手不足に加え、平川市農林課の對馬秀人主事は例年の問題として「捕獲が農繁期と重なる時期の隊員の確保が困難」と嘆く。

 白神山地を抱える西目屋村は、狩猟免許の受験料の全額補助のほか、威嚇用ロケット花火の農家への無償配布、電気柵の設置費や箱わな購入費を助成する事業などを行っている。西澤彰・産業課長補佐は「狩猟免許の所持者増へ周知に力を入れるべきだ」と国に提言する。つがる市農林水産課の松橋誠課長補佐は「猟友会の育成を目的とした事業を実施してほしい」と国や県への要望を語った。

 目撃情報に加え、死亡事故など人的被害が相次いだ青森市。本年度の出没件数は58件(3日時点)に上り、すでに昨年度1年間の56件を上回った。菊池朋康・環境政策課長は「猟友会に頼らない形での捕獲・駆除の仕組みも必要ではないか」と考える。駆除にはわなも欠かせないが、そもそも「保有するわなの数が十分ではない」(黒石市農林課の齋藤充さん)との声もあった。

 6月中旬に民家近くにクマが出没した八戸市は「住宅街でクマが出没した場合、猟銃での対応が困難」(農林畜産課の寺沢智幸課長)と実際の対応の難しさを吐露した。

 このほか、自治体の境界付近でクマが出没した際の自治体間の連携や情報共有の体制強化を課題に挙げる自治体も。南部町の担当者は「ICT(情報通信技術)などの先端技術を活用した広域的な捕獲を検討してほしい」と要望している。