東京新聞杯2023
[GⅢ東京新聞杯=2023年2月5日(日曜)東京競馬場、芝1600メートル]
当初はオニャンコポンをメインに扱う予定だった。ところが、GⅢ東京新聞杯(2月5日=東京芝1600メートル)の登録時点では出走ボーダーより下の17番目。実は管理する小島調教師も早い段階では“(賞金的に)出走できそう”との情報をつかんだうえで、この東京新聞杯を目標に調整していたのだが、1週前の時点になって「除外の可能性も出てきたんでしょ?」。なかなかうまくはいかないものである。
「夏場よりも、寒い冬場のほうが合っている感じ。ネコだけど」とは担当の武田厩務員。寒くてもコタツで丸くならない?元気なオニャンコポンが、前走の京都金杯(6着)に続く2度目のマイル戦で変わり身を見せて快勝するシーンを個人的には大いに期待していた。運良く上位馬に回避馬が出て、ゲートインがかなう展開にならないものか…。
そんなわけで“マネー”が重要なのは我々の生活も競馬の世界も同じ。リステッド、そして重賞ともなると「賞金加算」がいかに大事になるかは言うまでもない。出走順を決める賞金が少ないと肝心の使いたいところに使えないばかりか、強行ローテになったり、逆に間隔が空き過ぎたり、さらには適性外の条件に使うことになったりで…。
東京新聞杯にインダストリアを送り込む宮田調教師も1週前追い切り後に、そのあたりのことについて言及していた。
「ウチの馬で(出走順)15番目なんでしょ? 前走(カウントダウンS)で勝っていたから良かったけど、やっぱりボーダーが高いよね。グラティアスも(今年に入ってニューイヤーS3着→睦月S2着と)よく頑張ってはいるんだけど、(出走順決定賞金が少なくて)なかなか使いたいところに使えないのが現状だからね」
オープンクラスでコンスタントに成績を残すには、メンバー強化の壁はもちろん、それ以前に立ちはだかる賞金の壁も二重にクリアしなければならないというわけ。特にオニャンコポンやインダストリアのように2〜3歳年明けの早い時期に実績を残した明け4歳馬は、近1年の賞金の加算分がなくなってしまうだけに数字的には厳しい立場に立たされることが多くなるのだ。
インダストリアの場合は復帰戦を快勝したことで、しっかりとここへの出走につなげた。1頭だけ次元の違う脚で突き抜けた“力の違い”を見せつけるような一戦に「(プラス14キロは)少し太いかなと思ったけど、まったく問題なかった。今回も同じくらいの体重。まあ、迫力が増したということでしょう」とトレーナーは半年の休養を挟んでのスケールアップを強調する。それと同時に休養の要因となった爪の不安も「力をつけてくれば、それだけ爪への負荷も大きくなる。しっかりケアしていきたいし、それも走る馬の宿命ですからね」と覚悟のうえだ。
そう、GⅠ級の素質(NHKマイルC2番人気5着)を示してきたインダストリアが、より高いステージを目指すためには、この東京新聞杯でしっかりと賞金を加算することが至上命令となる。

著者:山口 心平