オークス2024

[GⅠオークス=2024年5月19日(日曜)3歳牝、東京競馬場・芝2400メートル]

 オークス(19日=東京芝2400メートル)での巻き返しはあるのか。クイーンズウォーク(中内田)の取捨に迷っている人も少なくないだろう。「距離が延びたらさらにいいだろうけど、ここでも勝負になるはず」。そう信じた人が多かったからこそ、3番人気の支持を集めた桜花賞。勝負に加われなかった8着という結果を陣営はどう見ているのか。牝馬2冠目へ、布石は打ってきたはずなのだが…。

桜花賞でつけられた決定的な差

 新馬戦こそ2着に敗れるも、その後は連勝でクイーンCを制し、一躍クラシックの有力候補として名乗りを上げたクイーンズウォーク。前年にリバティアイランドが牝馬3冠制覇を達成したこともあり、同じ川田騎手と中内田厩舎のタッグがブランド化した印象が持たれたことによる桜花賞での評価は単勝5・7倍の3番人気。GⅠ阪神JFの上位馬とは初めての手合わせであったが、それをしのぐほどの支持を集めたことは8着完敗の結果からすると過剰人気であったと言わざるを得ない。内めの2番枠ということもあり、道中は中団のインで我慢を利かせる形。コースロスのないレース運びから直線で1頭分開いた内のスペースに飛び込むもそれほどの脚は使えず、外を回って伸びてきた集団に一気にかわされ、前を行く馬さえも捕らえ切ることはできなかった。

 現状での力の差が歴然と表れた結果に、「桜花賞は内枠ということもあって、道中は内のもまれる位置で運ぶ形に。これまであまり経験したことのないレースの形、厳しい展開となったことで力を発揮できなかったという印象です」と福永助手はこれまでの経験値の差が敗因ではないかとの見解でレースを振り返る。とはいえ、もまれ弱さという新たな課題を突きつけられることとなり、舞台を東京二四に替えてもスムーズにストレスのない位置で運べる保証は全くない。わずかなスペースを突き破ったステレンボッシュにつけられたコンマ6秒の決定的なまでの着差を詰めることは困難を極めることであろう。

個性を最大限引き出すための調整

 それでも陣営がオークスへ向けて果敢にチャレンジする姿勢を崩さないのは、クイーンズウォークがじっくり成長を待っていいタイプであり、長い距離にこそ適性があるとの見立てでここまでの歩みを進めてきたからに他ならない。

 2歳のマイルGⅠ王者であり、スプリントGⅠにも挑戦した半兄グレナディアガーズとの比較について、「似ているのは走るという能力だけです(笑い)。言われなければ兄妹とは分からないくらいに全く別のタイプです」と話していたのは中内田調教師。牝馬にしては立派な馬体の持ち主であり、緩さが残ることで気持ちをせかせるとバランスを崩してしまうことから、ゆったりと走りを整えてから加速していくことで瞬発力を最大限に引き出す。そう意図した調整を課せられてきたのは、その個性を重んじているからこそ。勝ち続けて頂点を目指すのではなく、時には敗戦の苦汁を味わおうとも、最高に条件の整った舞台で最大限のパフォーマンスを発揮できるように準備してきた。千八の距離でデビューし、3戦目で東京への遠征を敢行したローテーションも、全てはオークスへ向けての伏線であったとするならば…。

「一旦は放牧に出されて、ここを目標に26日には帰厩。1週前にはジョッキー騎乗でウッド併せ馬を行いました。放牧明けでいくらか緩さが見られたところも、このひと追いでどう変わってくるか。レースまでにうまく態勢を整えていきたいですね。東京への輸送はすでに経験しているので問題ないでしょう。桜花賞の結果を受けると、もまれずスムーズに運ぶ形が理想となりそうですが、距離に関しては走ってみないと分からないところとはなります。同世代の牝馬ではスタミナはある方だと思うので、そのあたりの強みを生かすようなレース展開となればですね」

 福永助手は慎重な姿勢でレースの見通しを語るも、ここでの巻き返しを期待していないはずはない。それは桜花賞前の会見で、「マイルがベストの距離ではありません」と話していた川田騎手も同様であろう。乾坤一擲の大勝負を心して見守りたい。

大目標へ着々と準備を進めるクイーンズウォーク
大目標へ着々と準備を進めるクイーンズウォーク

著者:石川 吉行