スターホース・シンザンの登場が競馬界をにぎわせた
スターホース・シンザンの登場が競馬界をにぎわせた

 現在、東京スポーツ新聞の競馬連載では「皇帝伝説再び」と銘打って、シンボリルドルフの物語が進行中。同馬は1981年(昭和56年)生まれで、現役期間は83〜86年。ひとつ年上の3冠馬ミスターシービーとともに近代競馬の歴史を塗り替えた馬だが、そこまでの約20年間、乗り越えるべき「指標馬」として君臨したのがシンザンだ。

 この馬、1964年の3冠馬ながら、3歳時の評価は微妙なもの。皐月賞後に1敗、ダービー後には2敗しており、接戦を少差で勝ち切るスタイルもあって絶対的な存在とはいえなかった。しかし、4歳になった1965年(昭和40年)は5月に戦線復帰すると6連勝。途中オープンが3レースあったものの、前年に比べて重厚感と安定感が増した走りで絶対王者として認知されていた。

 で、昭和40年12月はそのシンザンの引退戦となる有馬記念が行われた。8日前に走った中山のオープンでこの年初めての敗戦(2着)を喫し、さらにテン乗りでの出走。このようにそれなりに不穏な材料もあったが、それも最強馬ラストランのエッセンスとしてとらえられ、レースは事前事後ともに大いに盛り上がった。

 当欄では「スターが生まれ→ファンの興味を刺激→マスコミの情報量がアップする」という近代競馬発展の経緯を繰り返し書いてきたが、シンザンの有馬記念はまさに第一期の沸騰点。レース前には複数回展望記事が掲載され、有終Vとなったレース後には、現代スポーツ紙の後記原稿の原型ともいえる派手なレイアウトで勝利を解説。完全成績、関係者インタビュー、引退後の解説など多彩な記事で競馬ファンを堪能させた。

著者:東スポ競馬編集部