チェルヴィニアが樫の女王に輝く
チェルヴィニアが樫の女王に輝く

オークス2024

[GⅠオークス=2024年5月19日(日曜)3歳牝、東京競馬場・芝2400メートル]

 19日、東京競馬場で行われた第85回GⅠオークス(芝2400メートル)はルメール騎乗の2番人気チェルヴィニア(木村)が桜花賞馬ステレンボッシュに半馬身差をつけて優勝。母チェッキーノ(2016年2着)の無念を晴らし、GⅠ初制覇で牝馬クラシック第2弾をモノにした。完敗に終わった桜花賞から激変の背景を探る。

 桜花賞に続く牝馬2冠に臨んだステレンボッシュを阻んだのは〝身内〟ともいえる同じノーザンファーム生産馬だった。血統的なバックボーンや厩舎、ジョッキーなどあらゆる要素で桜の女王にヒケを取ることがないチェルヴィニアの勝利そのものに違和感はない。ただし、管理する木村調教師も「びっくりしたし、責任を感じた」と驚きを隠さなかったように、桜花賞の結果(13着)を考慮すると単勝2番人気は過大評価な側面もあった。しかし、桜花賞馬に半馬身差をつけて先頭ゴールインという結果が、ファンのジャッジが極めて正しかったことを証明した。

 レースはショウナンマヌエラとヴィントシュティレの主導権争いで幕開け。前半1000メートル通過は57秒7と速い数字が記録されたが、向正面を中団やや後方で通過したチェルヴィニア=ルメールの体感は「離れた3、4番手以降はむしろ落ち着いた流れ」だった。木村調教師は「前半はゴチャついたし、走りもアグレッシブ過ぎた」と不安がよぎったというが、ポジションが定まってからは鞍上との呼吸もピッタリ。確かな手応えを感じながら直線では外へとパートナーを誘導した。

 最後の攻防では、好位から粘り込むランスオブクイーン、クイーンズウォークをあっさりかわし去ると、インから抜け出したステレンボッシュと一騎打ちに。ともに最速となる上がり34秒0の末脚を駆使したが、ストレスのない外の進路取りを選択したルメールに軍配が上がった。

 レース翌日の20日に45歳の誕生日を迎える名手はこれがオークス4勝目。GⅠのお立ち台はまったく珍しくないが、ドバイでの落馬骨折により、桜花賞、皐月賞を欠場したとあり、これが今年のGⅠ初勝利。「ただいま!」というあいさつに続けて家族、医師らのサポートに感謝を述べた鞍上は、桜花賞からの状態アップと高いポテンシャルを勝因に挙げた。「追い切りを見てもコンディションが良さそうでしたし、アルテミスSの内容からもやはり能力は高いので自信を持って乗りました。直線では本当のチェルヴィニアの走りを見せることができました」とパートナーへの信頼こそが好結果を手繰り寄せた。

「2歳の時に最初に坂路で見せた動きから、過去の管理馬に匹敵する素質を感じていました。1年がたって、レースでそれを表現できたことをうれしく思います」。木村調教師が評価する資質の高さには、数多くの名牝の背中を知るルメールも「スタミナと柔らかいフットワークのコンビネーションが直線でのパワフルでトップレベルな走りを生んでいる」と太鼓判を押す。

 秋以降の目標は、同じコンビで今週の日本ダービーに臨むレガレイラとの関係もあり現時点で未定だが、少なくとも国内牝馬路線における中心軸となることは間違いない。

著者:山河 浩