川田を背に抜群の動きを披露したシックスペンス
川田を背に抜群の動きを披露したシックスペンス

日本ダービー2024

[GⅠ日本ダービー=2024年5月26日(日曜)3歳、東京競馬場・芝2400メートル]

<美浦>これまでアパパネ、アーモンドアイという2頭の3冠牝馬を手がけ、今年もステレンボッシュで桜花賞を制すなど、牝馬クラシックでは無類の強さを誇る国枝調教師。しかし不思議と牡馬クラシックには縁がなく、いまだ未勝利…。ダービーにも7回(計8頭)挑戦したが、3着(コズミックフォース=18年)が最高となっている。関東を代表する名トレーナーも、ダービーへの挑戦は今年も含めて残すところあと2回のみ。悲願成就へ“今年こそ”の期待がかかる。

 送り出すのはシックスペンス。新馬→ひいらぎ賞→GⅡスプリングSと無傷の3連勝中だが、特筆すべきはその勝ちっぷり。一戦ごとに相手が強化されるなか、アタマ差→1馬身半差→3馬身半差と、着差を広げながら勝ってきた点に、同馬の非凡な能力が表れている。国枝調教師は「全体的にレベルの高い馬。まだ弱さがあって使い込めない面はあるけど、そういう中でも余裕を持って勝てているのは立派だと思うね。とりわけ前走のスプリングS。強風の影響でかなりのスローになったけど、最後はいい脚で伸びて、直線だけで後続を突き放した。上がりの2ハロンはともに10秒台。あの切れ味はダービーでも生きると思う」と、その才能にほれ込んでいる。

 その後は「万全の状態でダービーを迎えるため」に、あえて皐月賞は使わず、ここ一本に待機。ノーザンファーム天栄から1日に帰厩すると、8日に南ウッド5ハロン64・6秒、16日に同5ハロン63・8秒と強い負荷をかけて攻めてきた。

 注目の最終追い切りは新相棒の川田を背に、南E(ダート)コース経由で坂路入り。同厩の3歳未勝利2頭を追走。前を見ながら折り合いよく進むと、動きがあったのはラスト1ハロンあたり。鋭く反応するとあっという間に前の2頭をかわして先頭。最後は無理をせず余力を残したまま1馬身先着してフィニッシュした。

 これには見届けたトレーナーも満足顔で「文句ないね。もう息も体もできているから、今日はやりすぎず、やらなすぎずというイメージで乗ってもらったけど、タイムも反応も申し分なかった」。続けて口をついて出たのは鞍上・川田への賛辞だ。「さすがだよな。馬をきちっと走らせるもの。先週は併せた相手を気にするそぶりを見せていたんだけど、川田に言わせれば“まだ緩さがあるから、放すとデレッとしてしまうだけ”との評価。そのあたりを瞬時に把握して、なおかつ問題なく真っすぐ走らせてしまうのだからすごいよ。レースが楽しみ」と興奮を隠し切れない様子だった。

 一方、川田も確かな手応えをつかんだ様子。「精神的にとても穏やかで、いい雰囲気。まだ体の成長の余地を残しながらも、いい動きを見せてくれました。ポテンシャルの高い馬というのを感じました。何の心配もなく挑めると思います」と初コンタクトの感触を語ると「定年まで残りわずか。先生に、そして厩舎に、ダービーの称号を届けたい。僕にできる精一杯の仕事をしたいと思います」と伯楽に贈る“最高の騎乗”を約束した。

 まさに相思相愛――。馬、騎手、調教師が“三位一体”となり、最高峰の舞台に臨む。

著者:東スポ競馬編集部