田辺の好騎乗が光った
田辺の好騎乗が光った

ラジオNIKKEI賞2024

[GⅢラジオNIKKEI賞=2024年6月30日(日曜)3歳、福島競馬場・芝1800メートル]

 30日、福島競馬場で行われた3歳馬によるGⅢ第73回ラジオNIKKEI賞(芝1800メートル)は外国産馬オフトレイル(牡・吉村)が大外一気を決めて重賞初制覇を飾った。勝ち時計は1分45秒3(良)。低評価(6番人気)を覆す快走の裏には英国産の名馬の血を引く馬自身の力はもちろん、地元(福島県二本松市)出身・田辺裕信の冷静な手綱さばきがあった。

 開幕週の芝コースといえば前残りが定番だ。しかし6月29日に開幕した2回福島は良馬場ながら外に進路を取った組の差し、追い込み決着が頻出。例年とは異なる傾向をしっかりインプットしていた田辺が大仕事をやってのけた。

 日曜メイン以前で芝での実戦騎乗は2鞍のみ。それでも土曜10R・松島特別でニシノコウフク(通過順11→9→8)を好リードで2着に。ラジオNIKKEI賞で初コンビとなった英国産馬に対して陣営から出されていたオーダーは「内めの枠(5番)だったので極端に後ろからにはならないように」(吉村調教師)とスタンダードなもの。しかし、ゲート内で前がきをしたためタイミングが合わず出遅れ。1コーナーへは12頭中12番手での進入となってしまったが…。ここから〝プランB〟へ即座に切り替えたことで見事に好結果を手繰り寄せた。

「流れに乗って行ければと思っていたのですが…。ペースが速かったので、むしろ巻き込まれなかったのは良かったですね」と田辺は無理にポジションを取ることなく、後方追走を継続させる。メイショウヨゾラが刻んだ前半5ハロン通過は58秒4のハイペース。同じ後方待機組でも早めに動いたサトノシュトラーセ(9着)が伸びを欠いた一方で、4コーナーまで待ってのスパートが見事にはまった。直線では大外に持ち出すと先行勢を1頭ずつのみ込み、インから抜け出していたシリウスコルトをアタマ差かわしたところがゴールだった。「好位で運ばなくても、いい脚を使えることが分かったし、レースの幅が広がったと思います。まだ気性は若いですし、実績の割にハンデ(56キロ)を背負っていた中での勝利ですし、これからが楽しみです」と鞍上はパートナーの将来性に高い評価を与えた。

 管理する吉村調教師は「使うごとに実が入ってきましたね。父の実績からもマイルから中距離路線を目指すのでは」と今後の展望を語る。その父ファーは2013年に英国でロッキンジS(8ハロン)とチャンピオンSのGⅠ2勝を挙げた名馬とあればGⅠ戦線での飛躍もあり得るシナリオだ。

オフトレイルが重賞初制覇
オフトレイルが重賞初制覇

著者:山河 浩