小田原駅前の蕎麦店・寿庵で9月23日(土)、「第33回寿庵寄席」が開催され、小田原縁の噺家・柳家三三さんが出演する。寄席を企画する4代目大垣徹晃さんは「33回で三三さん。ダジャレみたいだけど、この回を実現したい一心で続けてきた」と話す。

寿庵は、1920(大正9)年に創業。昔ながらの技と素材で味を守る蕎麦店。「寿庵寄席」は、先代の博正さんが95年に始めた。知人の紹介で噺家と出会い、落語を演じる場所が会館やホールなどに移っていることを知り、「落語は江戸時代から続く庶民の文化。昔ながらの蕎麦屋の2階でやるのも面白い」と自店で企画。

仲間内で始めた寄席だったが、「噺家の瞬きも見える距離」と話題に。年2回、旬の噺家を呼び観客を喜ばせた。柳家小三治や五街道雲助など、後の人間国宝となった出演者もいた。裏方で演目を聞いていた徹晃さんは「生の落語はすごい」と夢中になった。

若手の活躍の場に

17年ほど前に4代目を継いだ徹晃さんは「寄席は続けていたが客層はマンネリ化。もっと若手の場にしたらどうか」と、出演者をベテラン勢から若手に一新。紙切りなどの色物を加え、年1回の開催を基本にした。「一時期、客足は激減。無料招待で客席を埋めたことも」と苦労を続けるうちに、前座の若手が真打に育っていく面白さもあり、いつしかキャンセル待ちがでるほどの人気に。コロナ禍で開催を見送った年もあったが「止めたら二度とできない」と続けてきた。

10年越しの約束

実は三三さんは第3回時に前座で出演。当時から頭角を現していた三三さんに、「10年前にすでに33回の出演をオファーしていた」という。22年にコロナ明け復活寄席として第30回にフライング出演となったが、約束は継続。三三さんは「地域の蕎麦屋で33回というのは、とてつもない歴史」と、本番を楽しみにしていると話す。徹晃さんは、歴代の出演者を記したTシャツを製作するなど本番に向け気合を込め、「集大成となる回。続けていくことが寄席の文化を守ることにつながる」と語った。

問い合わせは寿庵【電話】0465・22・2862(午後2時以降)。