南舞岡小学校は戸塚警察署と連携して、地域防犯に関する授業を昨年度から複数回行っている。児童が学んだ知識を生かして、地域住民と相互扶助の関係を築くことが狙い。同署によると、警察と小学校が長期間にわたりこうした取り組みを行うのは県下初。

同校では昨年度、社会の授業の一環で警察による出前授業を受け、職務内容や犯罪・事故防止などを学習した。その中で区内で頻発する特殊詐欺の実情を学び、総合学習の授業内では啓発ポスターを制作した。

これがきっかけとなり、今年度になると児童から「地域のお年寄りを自分たちの力で守りたい」という自主的な意見が発せられた。

そこで今年7月に、同署で職業体験を実施。白バイやパトカーへの乗車体験、鑑識や逮捕術などを学んだ。さらに児童が事前に考えた特殊詐欺啓発用の文章を音読し、録音。現在、戸塚駅構内やパトカーで定期的に放送しており、児童が啓発活動の一端を担っている。

一方、戸塚警察署は特殊詐欺の増加を受け、対策の一環として教育機関との連携を模索してきた。防犯や事故防止に関連した授業計画を署員自ら作成。区内の学警連や校長会などで提案し、協力を呼びかけた。

同署の村上滋敏署長は「詐欺の実情が子どもを通して家族や地域に伝わることで、住民の自発的な防犯意識向上につながれば」と話した。

守り、守られる関係に

南舞岡小学校の地主佐和子校長は「具体的に誰を守るか、想定できることが重要」と話す。そのため、今後はスポーツなどで地域住民と交流を深め、児童が特定の誰かを思い描きながら地域の安全を考えられるような授業を進めていく。

「学習が終わるころには、地域の中でお互いに守り、守られる関係が築ければ」と地主校長は語った。同署の本橋輝地域担当次長は「秋の授業ではパトロール体験を予定。子どもたちのパワーや発想力は犯罪や事故、特殊詐欺の抑止につながる」と期待を寄せる。

同署管内の今年8月末までの特殊詐欺認知件数は31件(昨年同期比マイナス25件)、被害額は約7000万円(マイナス約4300万円)と減少している。