鎌倉市は11月27日に定例会見を開き、12月6日開会の12月市議会に市役所本庁舎移転に関する「位置条例改正案」を提出しないことを明らかにした。位置条例案は昨年12月議会で否決されて以降、市は再提出を模索。今年に入ってからの議会ではいずれも提出を見送り、今回も同様の判断を下した。松尾崇市長は理由について、現時点で可決に必要な賛同が得られていないとした。

市役所の深沢地区移転を巡り、市議会での可決が必要となる「鎌倉市役所の位置を定める条例の一部を改正する条例」。12月議会への提出見送りについて、松尾市長は「現時点で可決の見通しが立たないため」と説明し、可決に必要な数の同意を現時点で得られていないと判断した。

出席議員の3分の2以上の同意が必要な条例改正案は、昨年12月議会に初めて提出したが賛成16、反対10と可決には2票足りず否決された。市はそれ以降、計画の再検討、関係者や市民への説明を進めながら条例改正案の再提出を模索してきたが、市議から3分の2以上の賛同を得られる見込みが立たず、2月、6月、9月議会でも提出を見送ってきた。

8月の定例会見で市は、新庁舎の開庁時期を、当初予定していた2028年度から30年5月以降に延びることを発表。松尾市長は「今回の提出見送りで、開庁予定時期の再度変更はない」とした。

「災害起きる前に」

市役所の移転予定地である深沢地区周辺では、今年10月に国土交通省が事業計画を認可。市役所新庁舎や公共的広場、商業施設、都市型住宅などを整備する方針で、自然や環境に配慮したまちづくりを目指している。移転の必要性について、松尾市長は「災害が起きたときに、現庁舎では業務が滞る恐れがあるため」と説明。深沢地区の整備着工が遅れることよりも、現庁舎の災害リスクを回避することを喫緊の課題として語った。

松尾市長は今後について、改正案の提出時期を明言しなかったものの、「可決の見込みが立った段階で提出したい。理解を得られるよう全力を尽くしたい」と述べた。