2004年4月に栄区で創業し、認知症高齢者グループホーム「ちいさな手」や介護付有料老人ホーム「シニアフォレスト」などの高齢者施設を展開する(株)メディカルケアシステム=本社・西区みなとみらい。今年20周年を迎えた同社の米山渉社長(52)に、インタビューを行った。

――なぜ認知症高齢者グループホームを業界に先駆けて立ち上げたのでしょうか。

「20代で二次救急指定病院の事務長として経営に携わるなか、当時退院後の認知症高齢者の受け入れ先が精神病院しかないことに大きな課題を感じていました。この状況をどうにかしなければと思ったのがきっかけです。その頃介護保険法が制定されたり思いに賛同していただいた地元の方や企業の支援もあり、認知症高齢者が適切なケアを受けながら安心して暮らせる『第2の我が家』を目指してグループホームを立ち上げました。最初は栄区田谷町の実家を事務所にして1人で起業。31歳の時です。その後、医療と介護連携で中重度の人を支えたいという思いもあり、介護付有料老人ホームの運営も開始。6年前に本社を大船の自社ビルからみなとみらいに移転しました」

――今では横浜・湘南エリアで25施設を展開。入居率も平均95%と人気です。施設の特徴は。

「入居金0円〜、月額20万円〜という価格帯ながら、デザイン性が高い建物や上質な暮らしを支える温もりある内装を実現し、ご好評いただいています。外観デザインは画一化せず街の景観に美しくなじむよう施設ごとに変えているので、一見すると高齢者施設だと気が付かないかもしれません。季節の草花が楽しめる屋外テラスなど、利用される方が住む喜びを実感できるような空間づくりを大切にしています」

――顧客満足度に加え、職員の勤務満足度も高いですね。

「当社では、職員が元気にイキイキと働くことが、良質な介護やお客様の幸せにつながると考えています。そのため、働きやすい職場環境の整備や資格取得の支援・研修を充実させ、新しい学びや成長する機会を提供。私自身も講師となり、会社のビジョンや介護の心構えなどを直接伝えています。介護業界では各施設によって介護方針やケア方法が異なっていたり、個人の感覚的な判断に頼っている部分が少なからずありますが、当社では自分の体験や経験値だけで判断して感覚的に行うのではなく、スタッフ全員が同じ方針や正しい知識を共有し、介護全体の質を高めています。また、現場では最新ICTで職員の業務を効率化する一方、人が直接かかわる介助サービスや対話などに充分な時間をとれるよう人員を多めに配置しています。これらが利用者と職員双方の満足度の高さにつながっているのだと思います」

――今後の展望と地域へのメッセージを。

「今期からは、認知症の方や高齢者の介護に有効とされるフランス発祥のケア技術『ユマニチュード』を本格的に導入する予定です。利用者が安心し、心地よく感じる視線の合わせ方や話し方、触れ方などの介助アプローチから、相手のことを大切に思う気持ちを伝える『やさしい介護』。想い・敬う・共感するという介護の本質がここにあると思います。これからも創業地である横浜の高齢者を全力で支援させていただき、介護業界にも貢献できるよう社員一丸となって邁進していきます」