鎌倉警察署は4月19日、交番に設置されたAED(自動体外式除細動器)で心肺停止状態の女児(8)を救命したとして、大町在住の高原麻里子さん(44)に感謝状を贈呈した。小児科医の高原さんは仕事帰りに通りがかった交番で、父親が女児に心臓マッサージするところに遭遇。近くにあったAEDで蘇生措置を施した。県内の全交番には10年前からAEDが設置されており、今回の救助に役立った。

JR鎌倉駅東口で4月1日午後6時15分頃、8歳の女児を抱えた母親が鎌倉駅前交番へ飛び込む。その光景を、駅から自宅へと歩き出した高原さんが目撃。「ご夫婦の様子が尋常ではなかった」。高原さんも後を追うように交番へ向かうと、床に横たわった女児に父親が心臓マッサージと人工呼吸をしていた。

「交番にAEDがあるのを知らなかった」。後にそう語った高原さんは、現場でAEDを見つけるとすぐに起動させ、1回目の電気ショックで女児が意識を取り戻した。交番に到着した救急車で女児はそのまま病院へ搬送。翌朝、母親から回復の知らせを受けた高原さんは、「元気になっていると聞いてほっとした」と振り返る。

藤沢駅近くの小児科に勤務する高原さんは同日、仕事が早く終わり普段より20分ほど前の電車で鎌倉駅に着いた。また職場では、自身15年ぶりとなるAED講習を1年前に受けていたため、自然に体が動いた。「偶然が重なった。医者になってよかったとも思った」(高原さん)

県内すべての交番AEDを設置済み

県内すべての交番や駐在所には、2014年5月までにAEDの設置が完了。現在もアクティブ交番などを含め約660台が配備されている。昨年度は36件の利用があり、警察官や今回の高原さんのような市民が使用して救助にあたった。

鎌倉署の森文男署長は、「高原さんの行動は見習わないといけない。署内でも救命講習を続け、もしもの時にAEDが活用される体制を整えたい」と語った。