少子化や他のスポーツの人気の高まりなどを受けて野球人気に陰りが見えている。そんな中、公立中学校の部活動顧問が学校の垣根を越えて野球人口拡大へ向け動き出した。旗振り役となっているのは岩戸中の迫田義広教諭。6月2日(日)に開かれる、未就学児や小学生を対象にした野球体験イベント「スカスタB─PARK」の実行委員長としてイベントを先導している。

野球人口の減少は横須賀市も例外ではない。神奈川県中学校体育連盟によると、市内の公立中学校の野球部員数は、2000年時点で1171人だったが、23年には半数以下の402人にまでその数を減らしている。

市内23校のうち、活動しているチームは15。部員数の減少などで、近隣校との合併チームが増加している。迫田さんが顧問を務める岩戸中の軟式野球部の部員数は16人いるが、そのうち小学生の時から学童チームなどで野球経験のある部員は1人だという。

22年に日本野球協議会普及・振興委員会が取りまとめた「野球普及振興活動状況調査」によると、全国で学童チームに所属する小学生は、10年から22年の間で、約12万人減少している。迫田さんはこれに対する解決策の1つで、未就学児や小学生などの早い段階から野球に親しみを持ってもらうことに焦点を当てた。「実際に競技として始める入口を提供し、中学・高校と続けていってほしい」と話す。

「遊び」通して

同イベントは横須賀市や横浜DeNAベイスターズ、神奈川県高校野球連盟などの協力を得て実施する。状況に理解を示す地元企業や団体が協賛して運営費などを賄っており、参加費は無料だ。

当日は、元ベイスターズで活躍した現球団職員の白根尚貴さんと古村徹さんをコーチに迎える。また、市内の中高生野球部員らも有志で協力。横須賀市民を中心にした運営となっており、参加者とのキャッチボールやストラックアウト、ホームラン競争などで楽しむ。

学童少年野球やクラブチームなどのチラシも配布する。「遊びを通して野球に触れてほしい。その中で競技に興味を持ってらもらえたら」と迫田さんは願いを込める。

対象は野球未経験の未就学児から小学6年生まで。午前10時から午後2時。定員なし。事前予約制だが、当日参加も可能。申込はHP「スカスタB─PARK」で検索。

女子人口は増加

減少の一途をたどる男子の野球人口だが、反対に女子は増加傾向にある。同調査によると、中体連に所属する全国の女子野球部員の数は10年時点で1505人。22年には2倍強の3936人にまで増えている。「女子プロ野球の盛り上がりや、高校生の大会で甲子園が使用されるようになった事で人気に火が付いたのでは」と迫田さんは分析する。

「大谷効果」も

硬式だけでなく、軟式のクラブチームもある横須賀市では、野球における選択肢が多様だ。これが一概に市の野球人口減少を誘因している理由とは言えないが、少子化が進む現代においては、人数が分散されることによって1チームあたりの人数が相対的に減少する。「各々の野球に対する熱量で入部先を選べるのは横須賀市の魅力の一つだが、そのためにまずは小学生の野球人口を増やしたい」と迫田さん。

そんな中、昨年行われたWBCや大谷翔平選手の活躍を受けて、野球を始める小学生の姿も増えつつある。学童・中学生の軟式クラブチーム「若竹ライナー」中等部監督の藤本浩司さんは「以前ほどではないが、小学生の部員が微増している」と話す。”野球熱”再燃への機運が高まっている。