「社会インフラ」としての重要性が増す中、川崎市内でも「こども食堂」が増加傾向にある。支援の輪が広がる一方、物資輸送の課題に直面している。現状について、NPO法人かわさきこども食堂ネットワークの理事長・佐藤由加里さん(58)に聞いた。

安価または無料で食事を提供し、子どもが一人で行っても安心して食事ができる「こども食堂」。子どもの貧困や居場所づくりへの関心の高まりとともに、全国に広がっている。市内では2017年の公益財団法人市民しきんの調査で17カ所だった参加数が、23年10月時点で83カ所に増加。コロナ禍があったにもかかわらず、右肩上がりで増え続けている。拡大の背景について佐藤さんは「多くの人ができたての温かい食事を出してあげたいという親心を持っているのではないか」と分析する。

佐藤さんは17年に、好きな料理で社会貢献しようと、こども食堂「菜の花ダイニング」を始めた。月に1回、高津市民館の分館で実施。平均120食を提供している。「次回も来るね」の言葉が原動力だ。

団体同士の交流の場を作ろうと、18年に任意団体を立ち上げた。市内のこども食堂の運営をサポートする中間支援団体として、ホームページの運営や情報共有、年1回の状況調査を実施。一覧化した「こども食堂マップ」も制作した。「支援の輪」は広がりをみせ、現在は日本KFCや川崎ブレイブサンダース、川崎フロンターレとパートナー企業12社からも支援を受けている。今年1月にはNPO法人格を取得。「大企業と連携するにあたり信頼面でのメリットは大きい」と話す。

「どうやって届けるかのフェーズに移行した」。食料品などの寄付が増える一方、運営にあたって大きな課題となっているのが「物流」という。「ウエインズトヨタ神奈川」から一部店舗の空きスペースを一時保管場所として提供されているが、拡大する支援物資の量には追い付いていない。「認定NPOを取得し、こども食堂を持続可能なものにしていきたい」と将来を見据える。