1954年3月1日、米国がビキニ環礁で行った水爆実験により、日本の漁船員らが被災した「ビキニ事件」から70年が経過した。三崎港でも150隻を超える遠洋漁船から相次いで放射能が検出され、地元経済は大混乱に陥った。こうした実相を風化させず、後世に語り継ぐため、4月27日に10年ぶりの市民集会が開かれた。ドキュメンタリー映画の上映会が行われ、同イベント実行委員たちは「ノーモアヒバクシャ」と会場の三浦市民ホールに集まった約300人を前に宣言した。

オープニングを務めたのは、三崎港を拠点に活動する「かもめ児童合唱団」【1】。『三崎の歌』ほか3曲を歌い上げると、大きな拍手で沸いた。

伊東監督「”負の遺産”ではない」

続いて登壇したイベント実行委員長の森田喜一さん【2】は「事件では三崎が一番被害を受けた。今後も世の中に伝えていくため、皆さんが中心になり、つないでいってほしい」とあいさつ。吉田英男市長は「つらい歴史をきちんと伝えることが、市の使命」と応えた。

その後、元ローカルテレビ局ディレクターでドキュメンタリー映画監督の伊東英朗さん【3】によるシリーズ作品『サイレント・フォールアウト』が上映された。50〜60年代にかけて米国・ネバダ州で行われた核実験による米国大陸の放射能汚染を追った内容で、子どもを被ばくから守るため女性たちが始めた「乳歯調査」を取材。膨大な文献調査と米国の被ばく者、研究者へのインタビューをもとに、今も続く放射能汚染の現実を伝えた。

映画上映後、講演を行った伊東監督は製作背景を明かした後、「目に見えず、臭いもしないしない放射能。被災の問題を”負の遺産”と捉えるのではなく、子どもたちにどう良い環境を残せるのか、平和を保てるのか、というプラス思考で受け止めてほしい」と訴えた。また映画は今年、米国で上映ツアーを行い、米国全土に問題提起することで、「調査と補償までたどり着きたい」との考えも示した。質疑応答では「今私たちにできることは」「こんなことが米国であったなんて知らなかった」といった感想が聞かれた。

実行委員の湊けいこさん【4】が集会宣言、採択後、エンディングは「三崎ゴスペルサークル」と有志【5】が、市民の歌詞に三浦をイメージしたメロディーを乗せた曲『海がきこえる』などを披露。歓声の中、幕を閉じた。