市が整備を進めていた五反田川放水路の運用が3月31日に開始された。4月27日には多摩区で完成記念式典が開かれた。

五反田川は、麻生区細山地区を源とする延長約4・8Kmの都市河川。多摩区東生田地区で二ヶ領本川に合流し、高津区久地にある円筒分水で平瀬川につながり、最終的に多摩川へと流れている。

高低差が著しい河川で洪水時には下流まで約20分で流下するとされ、下流部や二ヶ領本川との合流部では、急激な水位の上昇により、これまで度重なる水害が発生してきた。一方で、下流域の二ヶ領本川沿いでは都市化が進み、河道の幅を広げる改修工事などは難しい状況だった。

そこで市は治水対策の一環として、30年に1回程度発生するとされる時間雨量90mmの降雨に対応する放水路の整備を計画。1992年度に事業に着手して97年度に着工し、3月31日に本格運用を開始した。当初は10年程度での完成を見込んでいたが、用地取得交渉などが難航して事業が長期化したという。

洪水を多摩川へ放流

放水路は、多摩区生田に設置した五反田川の分流施設の水位が約2・7mに上がると固定堰を超えて水が分流部へと流れ本川の水門が全閉。下流への水流を止めるとともに、分流部から地下トンネルを経由して直接多摩川へ放流する仕組み。トンネルは内径8・7mで最大約13万㎥の水を貯留。延長2157mで県道世田谷町田線の地下を通る。最深地下約50m。市は、放水路の完成により時間降雨90mmでの二ヶ領本川下流部の浸水想定面積381haのうち、225haの浸水被害が軽減されると見込んでいる。

一方、市はこれまで、五反田放水路の完成により当該の全エリアが90mm降雨に対応すると発表していたが、全ての浸水想定面積を解消するには、多摩区菅仙谷周辺を源に二ヶ領本川へ合流する旧三沢川の洪水を他河川に放流するための整備や、二ヶ領本川下流部にあり水流を阻害する8つの橋への対策が必要になるという。市は今年度中に整備手法の検討と関係機関との調整を行い、来年度以降、検討結果に基づき取り組みを進めていくとしている。放水路の完成を受け市の担当者は「今後まだ対応しなければならないエリアはあるが、治水安全の向上に一定の効果はあげられたと考えている」と話している。

完成式典に60人

4月27日に登戸の稲田多摩川公園で開かれた市主催の完成式典には関係者約60人が出席。事業の説明やテープカット、多摩高校吹奏楽部による演奏などが行われた。あいさつに立った福田紀彦市長は「治水安全度の向上は長年の課題だった。ようやくこの日を迎えることができた」と述べ、関係者へ謝辞を贈った。