秦野市消防は救急活動の効率化を図るため、このほど「救急医療支援システム(NSERMobile)」を本格導入した。昨年度の実証実験を経て踏み切ったもので、秦野市内全救急隊6隊に配備している。

現在、高齢者人口の増加に伴う救急出動件数の増加、救急業務の高度化・多様化に伴う救急隊の救急活動及び事務処理の負担増加などが全国的に問題となっている。こうした中、秦野市は救命効果の低下及び救急需要の増大に伴う労務負担の増加を改善するため、昨年度TXPMedical株式会社の協力のもとでICT技術を利用したシステム「NSERMobile」を導入。約1年間に渡り、実証実験を行った。

同システムは、これまで紙ベースで行っていた傷病者の情報収集や医療機関への口頭での連絡などを、モバイル端末を使って行うというもの。モバイル端末で健康保険証や免許証、お薬手帳などをOCR(光学文字認識)で自動的にデータ化。負傷箇所や心電図の写真などもあわせ、提携先の医療機関に送信することで、受け入れ可否の早期判断ができたり、医師がリアルタイムで傷病者の情報を確認できるようになった。

市消防が実証実験中に扱った搬送件数は8743件。うち、協力救急医療機関(秦野赤十字病院、八木病院、神奈川病院)への搬送件数は5110件で、システム導入以来、現場活動で約1分、収容依頼で約1分、病院滞在で約2分の短縮が図れたという。

また、現状1件あたり6〜8分かかる帰署後の総務省消防庁への事案報告や市の救急出動報告書の作成業務についても、今年度中に完成予定の消防OAシステムとの連携とあわせると大幅の短縮が見込める。「年間約1万件の出動すべてで必要な事務作業のため、削減された時間を救急活動訓練や他の事務に充てられ、業務の効率化が期待できる」と市消防の担当者は話す。

今回の本格導入に伴い、市消防は伊勢原協同病院と東海大学医学部付属病院との連携もスタート。「救命の連鎖が途切れることなく、迅速に医療機関へバトンをつなぎ、救急体制の充実を図りたい」と話している。