超高齢社会を迎え、医療の重要性が高まる中、現場を支える大きな力が看護師だ。5月12日から18日の「看護週間」にあわせ、看護師の仕事の魅力や、働きやすい環境づくりの取り組みなどを藤沢市民病院の駒野美子看護部長(56)に聞いた。

藤沢市で生まれ育った駒野看護部長は、看護学校を卒業してから勤務は同院一筋。小児科や救急などさまざまな現場を経験し、今年の4月に看護部長に就任した。

地域医療支援病院や災害拠点病院などに指定される同院では、勤務する看護師は約700人。院内で一番人数が多いという。「皆が働きやすく、良い看護を提供できる環境づくりを推進したい」と背筋を伸ばす。

命を預かる仕事だけに、看護師たちの毎日は常に緊張感を忘れない。その中で、最も心安らぐのは「患者さんが笑顔で退院していく姿が一番の喜びであり、やりがいを感じる瞬間」と満面の笑みで答える。

まだ若い頃、事故で入院した患者の治療中、かけつけた家族に何も言えずそばに居ただけだったが、後日「あの時看護師さんが寄り添い続けてくれて助かった。ありがとう」と言われたことは、今も忘れられない。快方に向かう笑顔や、心を支える優しさに、患者と看護師が共に癒される。人と触れ合う仕事の醍醐味がそこにある。

人口減少の時代に、人手不足は各業界共通の課題となっている。看護師も例にもれず、働き方改革は重要課題の一つ。

突然の急患や容態の変化がいつ起きるかわからない病院は、365日24時間体制。簡単ではないが、「まだまだやれることはたくさんある」と、厳しく現場に目を配る。結婚や出産で仕事を離れる人も多い。駒野看護部長も、出産を機に一度は職を離れた経験がある。「ライフワークバランスと労務管理を複合的に見直していきたい」と前のめりで改革に取り組む。

医療技術の進歩も近年の大きな変化。これまでは助けることができなかった患者を助けられるようになったことは最大のメリットだが、複雑化する医療への対応が不可欠になる。「教科書通りではいかないことも増えてきている」とし、「現場は一生勉強です」と苦労も一笑に付す。

患者を癒し、患者から笑顔をもらう。看護師という仕事の誇りを胸に、今日も誰かの心に寄り添い続ける。

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近代看護を築いたフローレンス・ナイチンゲールの誕生日にちなみ、毎年5月12日が「看護の日」に制定されている。看護の日を含む日曜から土曜は「看護週間」とされ、看護の理解と関心を高める様々なイベントも行われている。