1980年代半ばから90年初頭に「県立最強」として、神奈川の高校野球に名を轟かせていた山北高校野球部。しかし昨今は思うような結果を残せない年が続く。こうした中、躍進を支えたOBらが「古豪復活」に向け部をサポートしている。

1974年創部の山高野球部は85年、89年、93年に夏の県大会でベスト4進出。高い守備力と決してあきらめない粘り強い姿勢がトレードマークで、当時は勝ち上がるたび「山の子旋風だ」と、大会を賑わせた。

常勝チームへの道筋が見えたかに思われた同部だったが、少子化や進学先の広エリア化などにより状況は一変。以降は5回戦進出は2015年のみ。22、23年は3回戦の壁に阻まれている。

「オール山北で」

「母校のために」と動いた一人が89年大会のメンバー、岡本龍二さん(53)。当時の大洋ホエールズに入団したプロ野球経験者だ。「ベスト4の試合を見て山北を目指した。強い公立校が進学の選択肢となるよう、力になりたいと思った」と岡本さん。5年前に元プロ選手が学生指導に必要な資格を取得。昨夏からは月数回、会社勤めの合間に指導に当たる。

岡本さんの考えは基本に沿ったもの。「野球は隙を作らないこと。飛びぬけた選手がいなくても『全員野球』で勝てることを伝えたい」と笑顔を見せる。

もう一人、昨年12月に監督に就任した並木和之さん(55)は、「強豪・山高」を率いた並木健男さんの息子だ。高校野球の指導経験が豊富で、山高OBとして13年ぶりに高校野球の舞台に戻ってきた。「このままでは合同チームになる可能性もあると聞かされ、何とかしたいと思い、覚悟を持って引き受けました」と並木監督。監督もまた会社員として働き、休日は母校で指導する日々を続けている。

ユニ復刻

創部50周年の節目となる今年。OB組織も気運醸成のために、当時のユニフォームを復刻させ、部員に寄贈することも決まっている。「オール山北の体制で古豪復活を目指す。きちんと野球に向き合う姿勢と環境があれば、選手は成長できる。今は『山高で野球をやりたい』という生徒をもう一度増やすことを考えている」と並木監督。山高は今夏、かつて強豪と肩を並べたユニフォームでベスト16以上を狙う。