「普通って何?」

「優秀って何?」

小学校低学年向けの学習教室「花まる学習会」代表で、“メシが食える大人に育てる”をモットーとする高濱正伸氏と、早稲田大学在学中に上梓した『五体不満足』が600万部のベストセラーとなり、その後はスポーツライター、小学校教諭などを経て現在はタレントなどとしても活動する作家の乙武洋匡氏。

2人が「ひとつのモノサシで子供たちを評価しない教育」について語り合った対談をまとめた『だから、みんなちがっていい』から一部を抜粋、再編集してお届けします。

子どもの状況は家庭によって簡単に変わる

高濱 正伸(以下、高濱):乙武さんは早稲田の政経を卒業した後に教員免許を取って教職を務めていた経験がありますよね。そのなかで、やりながら感じたこととか、壁とか、現実的な組織の問題とか、教員としてのこれならやれるなぁとか、何かエピソードはありますか?

乙武 洋匡(以下、乙武):まずは子育て・教育というところで言いますと、ひとつ悔しさがありました。学校の教師がいくら知恵を絞って奮闘しても、子どもの状況というのは、ご家庭の状況によって簡単に変わってしまうんだということでした。

高濱:本当にそうだよね。

乙武:ちょっと学校で問題行動が見受けられるようになった子がいたとして、どうしたんだろうと思って本人やご家族に聞いてみると、じつはご家庭で何らかの変化があったというケースが非常に多いんです。

例えば、それまでは「ただいま」と家に帰れば「おかえり」と迎えてくれていたお母さんが、おじいちゃんの入院によって毎日病院に行く必要ができてしまい、家に帰っても誰もいなくなってしまった、とか。これは誤解のないように言うと、お母さんがずっと家にいることが必要だという話ではなく、子どもにとっては変化がキツかったという話です。

大人からすれば「えっ、そんなことで!?」と思うようなことでも、子どもは家庭状況に変化があるとメンタルを崩しやすい。やっぱり家庭が安定していてこそ、新しいことに挑戦してみようとか、勉強やスポーツを頑張ろうという力が芽生えてくるんですよね。ちょっと悔しかったですね、

教員としては。あとは学校内の話で言うと、職員室というのはとにかく前例主義。チャレンジをしたがらない組織でしたね。ただ、これは教員たちが悪いのかというと、一概にそうとも言えなくて。抱えている仕事量とそれに取り組める時間とのバランスが悪すぎるので、新たなチャレンジをするにはリスクが大きいんですよ。前例を踏襲して過去の資料どおりにやれば、短時間で効率よく進められますから。