ここ数年、世界市場での日本企業の衰退など、悲観的なニュースを目にするようになってきました。これらについては多くの専門家がさまざまな観点から分析をしていますが、アメリカで日系企業を主なクライアントとして20年間活躍してきた、ニューヨーク州弁護士の大橋弘昌氏は、日本企業、日本人が交渉をしないことが大きな原因となっていると言います。

いったいどうすべきなのか。大橋氏が現場で培ってきた交渉術の極意をぎっしり盛り込んだ著書『どんなときも優位な状況をつくれる 負けない交渉術』から一部を抜粋・再構成して紹介します。

Time is Money.

時は金なり。アメリカ独立宣言の起草者の5人のうちの1人で、アメリカ建国の父と言われているベンジャミン・フランクリンの言葉です。アメリカの100ドル札の肖像でも有名ですね。“Advice to a Young Tradesman”(若き商人へのアドバイス)というエッセー本の中で“Remember that time is money.” と書いています。「時間を無駄にしないで働いて稼ぎなさい」という、若者へのメッセージです。

人が限られた時間を費やして交渉をするのはなぜでしょうか。自分に有利な内容で商談をまとめたいからです。成立が見込めない交渉に貴重な時間を使いたい人はいません。

商談を有利な方向に導くために、私たちはいわば時間というお金を投資しているわけです。交渉に時間を使えば使うほど投資金額が大きくなるわけですから、それだけその取引を成立させたくなってくるのではないでしょうか。

さて私が、はじめてアメリカ人による交渉を目の当たりにしたのは、テキサス州ダラスのロースクールに留学して間もなく車を買うことになり、ホームステイ先の主人であるリチャード・マーカスさんに付き合ってもらい、中古車屋を回ったときでした。