世界は、以前にも増して移ろいやすく、予測不能になった。企業は「いかに変化に適応するか」という競争にさらされている。

今後のマネジメントに重要となるのは、孤立やパワハラなどの「組織の病」を予防するために適切な介入・施策を行い、組織を幸せな状態に保つことだ。そのためにどうすればいいのか。人々の幸せを測定可能にする最新研究などを論じた『予測不能の時代: データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ』の一部を抜粋、再編集してお届けする。

幸せな人・幸せな組織は生産性が高い

われわれは、幸せと仕事や健康との関係について、「仕事がうまくいくと幸せになる」「健康だと幸せになりやすい」というふうに考えがちである。

実は、20年間あまりのポジティブ心理学やポジティブな組織行動の研究が明らかにしたのは、因果関係はこれとは逆だということだった。

「幸せだから、仕事がうまくいく」、すなわち、幸せにより生産性や創造性が高くなり、「幸せだと、病気になりにくく、なっても治りやすい」のだ。

研究によると、主観的に幸せな人(幸せだと感じている人)は、仕事のパフォーマンスが高い。具体的には、営業の生産性は30%程度高く、創造性では3倍も高い。さらに、同じく幸せな人は、健康で長寿で、結婚の成功率も高く、離職もしにくい。そして、幸せな人が多い会社は、そうでない会社よりも、1株あたりの利益が18%も高い。このようなエビデンスに基づく知見が続々と得られたのである。

なぜ、幸せだと生産性が高まるのだろうか。この疑問への答えを示唆する、スマートフォンを用いて行われた大規模な実験がある。2万8000人の被験者がスマートフォンに実験用のアプリをインストールし、アプリからの指示に従うという実験を行ったのである。このアプリは、時折、「今、何をやっていますか」「今、どんなムードですか」という簡単な質問を被験者に聞いてくる。被験者は、約1カ月間、この質問に答えた。

この実験において、「ムードが低下している」と答えた人がそれから数時間の間に増やした行動が明らかになった。それはスポーツや散歩などの気晴らしになるような活動だった。これは、ある意味でわかりやすい結果である。

ところが、「いいムードです」と答えた人が、それから数時間のうちに増やした行動は、意外であるとともに大変示唆に富んでいた。実は、いいムードで幸せな人は、面白くなくても、やらなければいけない活動を増やしたのだ。しんどくても、面倒くさくても、やらなければいけないことを、より多く行うようになっていたのである。