第3の言葉がけの「先生にできることはある?」で、問題解決の手助けをします。実際には大人から選択肢を与える形になることが多いですが、どんな支援を受けるのか、もしくはそもそも手助けを受けないのかを判断するのは子どもです。同時に、教員がサポートをする意志を表明することで、子どもも「先生は味方である」と認識するようになり、それがさらなる心理的安全性に寄与します。

3つの言葉がけを大人が繰り返すことで、結果的に麹町中学の子どもはひたすら自己決定をするしかない環境に置かれることになります。これは子育てでも大事なことですが、親が口や手を過剰に出すことなく、つねに子どもに自己決定の機会を与えていくと自己肯定感が高まり、自ずと自信と主体性が付いてきます。なぜなら自己肯定感とは「自分は自分のままでいいんだ」という自分にOKを出す感覚だからです。

どんなに小さいことでもいい

自己決定させることはどんなに小さなことでも構いません。とにかく、子どもでも決められるにもかかわらず、大人が勝手に決めてしまうことが子どもの自信と主体性を奪っていると、まずは理解しないといけません。

学校に対して不信感いっぱいな状態で入学した子どもたちも、教員全員が「3つの言葉がけ」を繰り返すことで、早い子で7カ月、遅い子でも1年半くらいあれば、当事者意識をもって課題解決に当たっていくことができるようになります。こうした子どもたちの変化に伴い、不登校の子どもや、いじめが減っていきます。学校を視察に来られた方々は決まって落ち着かない1年生のクラスの様子と3年生の穏やかな様子のギャップに驚かれます。

ポイントとしては「子どもを頭ごなしに叱らない」ことと「子どもに決めさせる」という2本柱を同時に実現していることでしょう。「叱らない」だけだと学校は野放図になるだけですし、子どもに決めさせてもそれを大人が毎回批判していれば、決めることが嫌になります。この2本柱が同時にあることで、「あ、この学校は失敗しても大丈夫なんだ。やり直せばいいんだ。いろいろなことにチャレンできるんだ」という安心感が生まれるのです。

著者:工藤 勇一