「老後に貯金はいくら必要でしょうか?」 「貯金ではなく株式投資をやるべきでしょうか?」――。『ただの人にならない 「定年の壁」のこわしかた』を上梓した公認会計士の田中靖浩さんのところにはサラリーマンの方からこのような質問が多く寄せられるそうです。そんなとき、田中さんが提案するのは、「定年後も働く」という選択肢だそうです。

「子育てが一段落つき、ある程度の蓄えがあり、退職金・年金が期待できる方であれば“月に数万円”稼ぐことができれば十分なはず。定年後は雇われずに、好きな仕事をして小さく稼ぐ『令和フリーランス』がオススメ」と言います。令和フリーランスとは? 明るく楽しい老後にするにはどうしたらいいのでしょうか?

(※本稿は同書より一部抜粋し再構成のうえお届けします)

まずは、こんな光景からご紹介します。

家に居場所がない経理マンの叫び

「ふざけるな!」

のどかな店内に怒気を含んだ声が響いた。たまたま居合わせた数名の客が心配そうにレジ前の様子をうかがう。自ら発した大声で河西の興奮はさらに高まる。

クレーマーとは何だ。あまりに失礼じゃないか。テーブル越しに睨みつけると、若い男性店員はうつむいたままだ。

「たいへん失礼をいたしました」

お詫びの言葉とともに店長が姿を見せた。何度もお辞儀を繰り返す店長。

まだ若いけれど、後ろの男性店員をかばう姿は、まるで母と息子に見える。型通りのお詫びをすませてから、店長はアルバイトからも事情を聞いた。

発端は河西が先日注文した書籍を、このアルバイトが取り置きを忘れて売ってしまったことだった。入荷の電話をもらってわざわざ来たのに肝心の本がない。そのうえ、「改めて注文しますので数日お待ちください」と言われて呆れた。

間違えたうえに、再度注文しろとはトラブル対応がなってない。許しがたいミスと対応だった。

「小さなミスから組織はダメになる」これは長年経理の仕事をしてきた私の信念だ。二度とこんなことが起こらぬよう、店と彼のためを思ってわざわざ言ってあげたのは私のやさしさなんだ。しかも、できるだけ穏やかに話した。それなのに、背中越しに聞こえた「クレーマー」の一言。これにカチンときて踵を返し、どういうことだとカウンター内を怒鳴りつけた。

一部始終を聞き、「誠に申し訳ありませんでした」と再び頭を下げる店長。