階級や格差の固定化、社会的地位上昇機会の喪失がもたらす「新しいかたちの貴族制」を徹底分析した『新しい封建制がやってくる:グローバル中流階級への警告』(ジョエル・コトキン著)が、このほど上梓された。「これから世界がどのようなディストピアになるか」について書かれた本書を、思想家の内田樹氏が読み解く。

「意識高い系」がもたらす「新しい封建制」

本書のタイトルから2つのことがわかる。「新しい封建制」が切迫していること。それによって最も大きな負の影響を受けるのがミドルクラスだということである。

少し前に東洋経済オンラインで紹介した『WOKE CAPITALISM「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』と問題意識の多くは共通している。

超富裕層への富の集中、テックジャイアントの国家化、左右のポピュリズムの興隆、ミドルクラスの没落と民主主義の機能不全……どれも最近のアメリカの書物や論文に頻出する文字列である。でも、さすがに「封建制」まで踏み込んだ用例を私は知らない。さて、「新しい封建制」とは何か。

「今日、アメリカその他の国で出現しつつあるのは、新しいかたちの貴族制である。というのも、脱工業経済のもとで、富が少数者の手に集中する傾向がますます強まっているからだ。社会の階層化が進み、多くの人びとにとって社会的上昇の機会が狭まりつつある。(…)社会的上昇の道が閉ざされようとしているなか、自由主義的資本主義(liberal capitalism)モデルは世界中で魅力が褪せていき、いくつかの新しい教義が現れつつある。その一つが、新しい封建制(neo-feudalism)とでも呼ぶべきものを支持する教義である。」(36頁)

世界中の富を占有しているのはテックジャイアントのCEOたちをはじめとする「寡頭支配者(oligarchs)」である。

「世界人口の上位0.1%が保有する世界の富の割合は、1978年には7%であったが、2012年には22%にまで増加したとされる。(…)2030年には、上位1%の富裕層が世界の富の3分の2を支配することになると予想されている。」(37頁)