プロジェクトは、それ自体が目的であることはなく、目的を達成する手段に過ぎない。高層ビルの建設や、会議の開催、製品の開発、本の執筆等々は、それ自体を目的として行われるのではない。ほかの目的を達成するために行われる。

これは単純で当たり前のことだ。だが、「見たものがすべて」の錯誤に陥り、明白で議論の余地のなさそうな結論に飛びつくとき、私たちはこのことをいとも簡単に忘れてしまう。

「答え」から始めるとアイデアは生まれない

プロジェクトを始めるときには、手段と目的のもつれをほどいて、「自分は何を達成したいのか?」をじっくり考え、心理メカニズムのせいで性急な結論に飛びつきたくなる衝動に、なんとかしてストップをかけなくてはならない。フランク・ゲーリーの、「なぜこのプロジェクトを行うのですか?」の問いかけが、そのカギを握る。

たとえば政治家が、島と本土を結びたいと考えたとしよう。橋の建設にはいくらかかるのか? どこに橋を架けるべきか? 工期はどれくらいか? こうしたことを細かく議論すれば、立派な計画を立てたような気になるかもしれない。

だが実際には、「橋を架けるのが一番だ」という答えから始めてしまっている。もしその代わりに、「なぜ」島と本土を結びたいのかを考えれば──たとえば通勤時間の短縮や、観光客の誘致、緊急医療へのアクセス改善のためなど──最初に「目的」にフォーカスし、次にその目的を実現するための「手段」の議論に移るだろう。これが正しい順序だ。新しいアイデアはここから生まれる。トンネルはどうだろう? フェリーは? ヘリポートは? ニーズを満たすために島と本土を結ぶ方法はいくらでもある。

目的によっては、物理的に結ぶ必要すらないかもしれない。高品質のブロードバンドサービスは、わずかなコストでいろんなニーズを満たせるだろう。それに、島を「結ぶ」ことは必要でも得策でもないかもしれない。たとえば緊急医療のアクセス向上が目的なら、一番よいのは島に医療施設をつくることだろう。

だが答えから議論を始めてしまうと、こういったアイデアはけっして生まれない。

十分な情報をもとに、「何のために、なぜやるのか」を明確に理解すること、そして最初から最後までそれをけっして見失わないことが、成功するプロジェクトの基本である。

著者:ベント・フリウビヤ