たとえば「極小ロットでしか生産されない幻の日本酒」は、味と希少性で購買欲に訴えることができます。あるいは「劇的に薄毛を改善できる自社開発の育毛剤」は、特定の人の課題を解決することができます。また、定期的な購入が見込めるため、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)も伸びやすいというメリットもあります。

いずれも「ここで買う理由」を作りやすい商品・サービスです。このように商品やサービスとニーズをマッチさせることができれば、それだけで売れていくでしょう。

ほかにも、写真や動画といったインターネットの特徴を活かしやすい商品やサービスもEC向きです。

たとえば、いわゆる「シズル感」の演出です。

瓶に入ったはちみつは、スーパーの陳列棚やAmazonや楽天市場などに並んでいる限り、どれだけ容器のデザインを変えても「食べたい!」という欲求に訴えることは難しいでしょう。

それがメーカーの自社ECサイトで、木匙(さじ)ですくい上げた黄金色のはちみつがとろりと流れる動画が目に入れば、「美味しそう」と感じてもらえます。インターネットの特性を最大限に活かすノウハウを知ることで、お客様の欲求にダイレクトに訴求できます。

ECは、従来のように「多くの人に向けて、広く商売する」のではなく、自分たちの持つ「世界観」を伝え、1人のお客様との間に強いつながりを作ることが大切です。「たった1人の心をつかんで離さない商売をする」ことが、結果的にビジネスを加速させることになります。

ECの収益構造

企業がECを導入するとき、迷う要因の1つは「本当に儲かるのか?」ということです。ECモールでは手数料がかかり、自社サイトでも初期の導入費用や運営していくうえでのコスト、商品の送料などもかかります。

ここで重要なのが、顧客1人あたりの経済性を示す「ユニットエコノミクス」が成立しているかという観点です。

ユニットエコノミクスは、売上LTV、販売原価の合計、CPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)で構成されており、売上LTVから販売原価の合計とCPAを引いた数字が1人の顧客から得られる粗利になります。

まず、このユニットエコノミクスが成立している状態をゴールとして目指します。これを維持できるようになれば、あとは顧客数を増やしていき、顧客あたりの売上が積み重なっていくことで事業全体の売上を作っていくことができます。そこから人件費などの販売原価以外のコストが引かれますが、これがうまく回るようになれば利益が出るという構造です。