人材に投資することで企業価値を高める人的資本経営が注目されており、エンゲージメントは人的資本経営において重要な指標の1つとされています。今や転職が当たり前の時代になっており、企業は従業員や求職者から選ばれるためにも、エンゲージメントを高めることは大切です。しかし、エンゲージメントは近年よく聞かれるようになった言葉であり、誤った認識を持っている方も少なくありません。

本稿では、エンゲージメントにまつわる誤解を解消し、その向上のポイントを紹介します。『企業実務』の記事を再構成し、組織人事コンサルタントである、リンクアンドモチベーションの田中允樹さんが解説します。

「エンゲージメント」と「従業員満足度」の違い

そもそも、エンゲージメント(Engagement)は「婚約」等を意味する言葉ですが、人事・経営の文脈では、従業員の企業に対する「愛着心」や「愛社精神」を意味します。リンクアンドモチベーションでは、エンゲージメントを「企業と従業員の相互理解・相思相愛度合い」と定義しています。

エンゲージメントは、従業員満足度とは異なる概念です。

従業員満足度とは、文字どおり「従業員の企業に対する満足度合い」です。例えば福利厚生や働きやすい環境づくりなど、企業が従業員に何かを提供し、それに対して従業員がどの程度満足しているのかを示す指標とも言えます。