今、不安を理由に会社を離れる人が増えていると言われる。会社に不満があって辞めることと対比して不安型離職と呼ばれており、しかもその不安は、不満のない職場からでも湧いてくるそうだ。特にZ世代と総称される若手社員にその傾向があり、会社や上司はいかに不安を感じる若手を繋ぎ止めるか、という難問に直面している。

企業組織を研究する東京大学の舟津昌平氏は、Z世代がその渦中にあるとされる「不安型離職」について、ビジネスの観点から分析する。

本記事では、舟津氏の著書『Z世代化する社会』より一部抜粋・再構成のうえ、「不安型離職」について考察し、その真の問題点を浮き彫りにする。

早期離職という困った現象

離職という現象がある。言うまでもなく、仕事を辞めることを指す。一般的には悪いイメージが先行する気がするものの、もちろん前向きな離職もたくさんある。特に近年は雇用の流動性つまり人の入れ替えが徐々に活発化していて、転職およびそれに必然的に伴う離職は、まあありふれた出来事になっている。

しかし、離職はとても困ったものでもある。誰にとってかというと、会社にとって、である。会社というものは、おそらく一般に思われている以上に、社員に「コスト」をかけている。人を一人雇うというのは、とんでもなく大変な投資なのだ。そして、この投資対効果(コスパ)が発揮されるまでは、けっこうな年月がかかる。

入社すぐの新入社員なんて正直全然役に立てないけど、ちゃんと教育して、仕事を任せて、数年の投資によって成長して、やっと成果が会社に還元されていく。