一定の年齢・年次に達した管理職を平社員に降格させる役職定年。多くの日本企業が導入してきた同制度を、廃止する企業が近年増えています。今回は、企業が役職定年を廃止する理由と従業員への影響について考えてみましょう。

役職定年は年功序列と密接に関係

世界の多くの国でも、定年制は存在します。しかし、役職定年という制度が広く普及しているのは、おそらく日本だけでしょう。

役職定年が広がったのは、1986年のことです。 この年、高年齢者雇用安定法により、企業が定年制を設ける場合には定年を55歳から60歳に延長することが義務化されたことを受けて、大手企業が導入を進めました。

当時、年功序列の賃金体系を採用している企業が多く、50代の賃金は下の年代と比べて高水準でした。50代を高賃金のまま雇用延長するのは困難だと判断した企業が役職定年、つまり降格=賃金引き下げによって人件費負担の膨張を防いだのです。

役職定年になった社員の9割以上が年収減になり、さらにそのうち約4割の人が「年収50%未満」まで給与水準が低下しているという調査結果があります(ダイヤ高齢社会研究財団、2018年調査)。