会話の中で何となく聞いたことがある話題が出たときに「間違ったことを言ってはいけない」と思って「知りません」と返してしまうことはないでしょうか。相手に気をつかいすぎたり、自信がなかったりするとき、ついやってしまいがちです。

ところが、これは望ましい返し方ではありません。齋藤孝さんが40年にわたって続けてきたコミュニケーション講義のエッセンスを紹介した『「考えすぎて言葉が出ない」がなくなる』より一部抜粋、再構成してお届けします。

会話で「知らない」は暴力です

コミュニケーションの視点でいうと、これは決してやってはいけないことです。もはや「暴力」と言い換えてもいいかもしれません。なぜなら「あなたとのコミュニケーションを断ち切りたいです」という意思表示だと受け止められるからです。

「知らないからそう言ったのに、何でそれが悪いんだ」と思われるかもしれません。でも、相手とうまくコミュニケーションをとっていこうとするなら、なんでも真っ正直に返せばよいというものではありません。

たとえば、知らなくても「あ、名前は聞いたことがあります」と返してくれれば、相手は「そうそう、その○○なんだけど……」と会話が続けられます。

でも、「知りません」と言われると、あとが続かない。せめて「もしかしたら聞いたことがあるかもしれません」と言えば、相手は内容を説明してくれるでしょう。

返し方としては、ほかにも、

「もしかしたら○○ということですか」

「聞いたことはあるけれど、やったことはないんです」

など、いくらでもありますよね。