過去の拡大戦略の失敗から深刻な業績不振に陥っている三菱自動車。新型コロナウイルスによる需要激減が追い打ちをかけ、今2021年3月期の最終損益は3600億円の赤字を計上する見込みだ。

正念場に立たされた同社を率いる加藤隆雄CEO(最高経営責任者)は、2019年6月にCEOに就任。それまではインドネシア合弁会社社長を務めていたが、本社役員の経験がない異例の大抜擢だった。故益子修会長(当時)が退任した2020年8月からは名実ともに経営トップとして、生き残りに向けた構造改革の指揮をとる。

販売回復が見通せない中、年間販売100万台程度の小規模メーカーをどう導くのか。加藤CEOに聞いた。

アライアンスに慣れていなかった

――2016年に日産自動車と提携した後、欧米や中国などメガマーケットを軸にした拡大路線を志向しましたが、多くの目標は未達に終わりました。どこに誤算があったのでしょうか。

前回の中期計画で掲げた拡大戦略では、とにかく販売台数を増やせばいいということで、インセンティブ(販売奨励金)もいっぱい使って、押し売りに近いような状況になっていた。加えて、欧米向けの新車開発がどんどん増え、人も設備も足りない。他社は新しいソフトウェアを導入し、われわれもやらなければということで、どんどんお金を使ってもいいのだと、社員のマインドが一気に緩んでしまった。

また、欧米向けの車種は先進運転支援技術などCASE対応が必要で、そのためのコストも膨らんだ。EV(電気自動車)は今、どこの会社も儲かっていない。非常に高い開発費をかけても儲からないのなら、東南アジアなどほかの地域とのバランスを考えて開発すべきだった。

2016年5月に資本提携の会見に臨んだゴーン氏(左)と益子氏

――提携先の日産自動車も現在、カルロス・ゴーン元会長が進めた拡大戦略の後遺症に苦しんでいます。

仏ルノーも含めたアライアンス全体が同じ(拡大)戦略をとったので、3社とも今、そこで苦しんでいる。当社が2016年からアライアンスに加わり、販売台数が3社合計で世界1位になり、当時は利益も結構上がっていた。それで「アライアンスの言うとおりにやっていれば今後は大丈夫だ」というマインドが社内に生まれてしまった。アライアンスというものに三菱自動車が慣れていなかった。

――慣れていなかったとは?

日産やルノーが持っている技術など、必ずしもアライアンスのアセットすべてが自分たちのためになるわけじゃない。そこは当社が精査・検討をして、「こういうところは自社に取り入れるべきだ」「ここは自社にはメリットが少ないから必要ない」という判断をきっちりやる必要があった。自分たちで中身を検証できていなかった。

著者:岸本 桂司