菅首相は18日夕、官邸でのコロナ関係閣僚協議の場で、「新型コロナウイルスのワクチン接種を円滑に行うため、政府の総合調整に当たってほしい」として河野氏をワクチン担当相に指名した。その後、菅首相は「ワクチン接種は感染対策の決め手だ」と力説し、河野氏起用の理由については「規制改革担当として、(多くの)役所にわたる問題を解決してきた手腕だ」と、河野氏の突破力への期待を強調した。

菅首相の突然の指名に、河野氏は「『プロジェクトX』みたいな、結構大きな仕事になるんだろうな」と戸惑いを隠さない一方で、「国民の協力をいただきながらやらなきゃいけない。1人でも多くの方に、1日でも早く(ワクチンを)打っていただけるような仕事をしっかりとやっていきたい」と述べ、各省との調整に不退転の決意を表明した。

ワクチン接種に広がる自治体の不安

ワクチン接種は、すでにアメリカを始め多くの国で始まっており、日本の出遅れ感は否めない。世界各国が激しいワクチン争奪戦を展開する中、日本は2020年秋以来、官邸主導でワクチン確保に邁進。菅首相は「早期にワクチンの安全性を確認し、できれば2月下旬にも最優先の医療従事者に対する接種開始にこぎつけたい」と繰り返してきた。

ただ、ワクチンには依然として重大な副反応の有無など未知数の部分が多い。安全確認のための国内承認手続きも、「拙速は許されない」(感染症専門家)のは当然だ。しかも、「全国民にいきわたるような大量のワクチン確保や、接種のためのマンパワーと関連施設の準備などはまったくの手探り状態」(厚生労働省幹部)だ。

河野氏も「私は、このワクチンの接種に必要なさまざまなものの『ロジ』をやる認識でいる」と緊張した表情で語った。ロジとはロジスティクスの略で、物流管理を意味する。ワクチン接種の実務を担う地方自治体には「必死に準備を進めるが、経費負担や人員確保での政府との調整が滞れば大混乱になる」(有力県知事)との不安が渦巻く。

河野氏は、大胆な行政改革など、霞が関の前例主義と秩序を破壊する政治家として現在の地位を築いた政治家だ。史上最長政権となった安倍晋三前内閣では外相、防衛相の要職を歴任。菅内閣では規制改革相として、かねてからの持論であるハンコ廃止に猛進し、短時間で結果を出すなど菅首相の期待に応えてきた。

河野氏は「霞が関のタブーに挑戦し、従来の官僚的発想を打破して目的を遂げる」(自民幹部)のが得意技。これに対し、コロナワクチンの接種という前例のないプロジェクトで、経験や実績を持たない各省庁や自治体を総合的にまとめ上げるには、丁寧で柔軟な調整能力が必要となる。つまり、「河野氏の破壊主義とは真逆の任務」(閣僚経験者)で、与党内でも「ワクチン接種はハンコ廃止とはまったく違う」と河野氏の調整力への疑問と不安も相次ぐ。