風車が回って起こした電気も石炭火力発電所でできた電気も、電気は電気。しかし気候危機時代、日々使う電気の由来を気にする人たちが増えている。

みんな電力(代表取締役:大石英司、東京都世田谷区)は「電力のトレーサビリティシステム」を開発し、環境省の賞を受賞した。担当したのは、原子力発電所で13年間勤務した元関西電力技術者。東京電力福島第一原子力発電所の事故から10年の今、システムの新たな展開を目指している。

素性の明らかな自然エネルギーの電気を買う仕組み

ホウレンソウ、ダイコン、キャベツ……。最近は、スーパーに有機野菜が並ぶコーナーがあり、作り手の名前や畑の場所とともに笑顔の写真入りのシールが貼られていることもある。生産者や作り方を知ったうえで、消費者が食材を選べるようになってきた。

そうはいかないのが電気。「外国から輸入した石油や石炭ではなく、太陽光や風力など自然エネルギーを使った電気を使いたい」と考える人が増えている。燃料費として外国に流れるお金は国内にとどまり、二酸化炭素の排出も激減するからだ。しかし消費者側で「●県の✖発電所からの電気を選ぶ」ことは難しかった。

野菜は見た目も味も違うが、電気はどのように作っても違いはない。いったん送配電網に入ると、どこから来た電気か見分けがつかなくなる。

「どこの発電所からの電気か、わかるようにするにはどうしたらよいか、考えに考えました。そして、これはお金の送金と同じだ、と気づいたのです」

電力小売りを行う新電力、「みんな電力」の専務取締役、三宅成也さん(50歳)は、電力トレーサビリティシステムの開発をこう振り返る。

「北海道で僕が1万円を振り込んで相手に東京で引き出してもらう場合、お金はまったく動いていませんが、1万円を僕が振り込みました、という証明があればよい。これと同じで、北海道で作った電気を送配電網に入れました、東京で引き出して使いましたということが特定できれば、取引は成立します」