修氏の退任発表と同時に公表した5カ年の新中期経営計画では、2021年度からの5年間で1兆円の研究開発費を投じる計画を盛り込んだ。2020年度の見込みが約1500億円なので、来年度以降は年間3割以上積み増す計算だ。

「1兆円のほぼ全額に近い金額を電動化対応に費やす。スズキが2025年以降も生き残ることができるよう、電動化技術を集中的に開発する」と俊宏社長は危機感をあらわにした。

インド市場の競争は激化

もう1つの課題はインド市場での競争力維持だ。現地子会社のマルチ・スズキは新車販売で5割の圧倒的なシェアを有しているが、インドの市場成長性に目をつけた長城汽車や上海汽車といった中国勢や、韓国の起亜自動車が近年相次いで参入。足元の競争環境は以前よりも激しくなっている。   

インドは輸出生産拠点としても重要な役割を担っている。写真は輸出用にインドで生産するジムニーと現地従業員(写真:スズキ)

中でも韓国の起亜自動車は2019年に現地では高価な中型SUVでインド市場に参入し、2020年に6%の販売シェアを獲得した。同じ韓国の現代自動車も中型SUVの販売が好調だ。いずれもマルチ・スズキが得意とする小型車より値段が高いが、現地の高所得者の間で人気を集めている。

スズキは小型かつ安価な車を売りにして、インドで現在の地位を築いた。しかし、起亜の中型SUVのヒットが示すように中・高価格帯車種のニーズも着実に増え始めており、インド市場で高いシェアを確保し続けるには、多様化する現地消費者のニーズに細かく対応する必要がある。

俊宏社長は「今のシェアを保つのは非常に大変なこと」としつつも、「各セグメントで適切なモデルを投入し、乗用車でシェア50%を維持する」と意気込みを語った。

修会長は会見の席上、俊宏社長に送る言葉を尋ねられ、「若手のチーム力を最大限に利用して、2030年、2050年につなげてほしい」とエールを送った。電動化の大きな波を乗り越えつつ、インド市場を死守できるかどうか――。バトンを渡された俊宏社長を筆頭とする新経営陣に、スズキの未来が託された。

著者:中野 大樹