「桑田真澄の息子。周囲からは野球をやって当然と思われる家庭に育ったMattです。だけど彼が生まれたときから私の願いは、たったひとつでした。親や周囲の期待によってではなく、Mattが心からやりたいと願うこと(それが野球でも野球じゃなくても)を見つけて欲しいというものでした。」――。桑田真澄さんの妻であり、モデルやミュージシャンとして活躍するMattさんの母である桑田真紀さんは、自身の子育てについてそう語ります。桑田さんが上梓した『あなたはあなたのままでいい ――子どもの自己肯定感を育む桑田家の子育て』を一部抜粋、再構成してお届けします。


「お兄ちゃんはパパのように、一生懸命野球を頑張っているのに、あなたはなんで頑張れないの?」

夫も私も、そんな風にMattを責めたことは一度もありません。長男をはじめ、野球少年たちと接する機会がたくさんありましたが、Mattを誰かと比べることはしたくなかったのです。

「お兄ちゃんはあなたの年には、こんなことができたのに」なんて、絶対に言ってはならない言葉だと思ってました。

そもそも私自身が野球をやったことがないのに、偉そうなことも言えません。ただ、感想があるときは、「ママはMattではないし、やったことないからよくわからないけど……」と前置きしたうえで、もうちょっとこうしたほうがいいんじゃない?と本人の意思を尊重する形で、折に触れて話し合ってきました。

我が子に何が向いているのか?その子が夢中になれるものはなんなのか?それを見極めるのは本当に難しいことです。同じ親から生まれて、同じように育った兄弟だとしても、同じ人間ではないので。

周囲に見せないようにしてきた

第一子がこの年齢のときにこれをさせたから、第二子にも同じタイミングで同じことをさせるっていうのは、一見平等なようでいて、平等じゃないと私は思っています。もちろん、本人が望むのなら話は別ですが。見極めは難しいかもしれませんが、とにかくよく子どもの言動を気にかけて、その子が心地いい環境を作ってあげる。そこが大事だと思うのです。

野球に関しては、Mattのことは周囲に"見せない"ようにしてきました。長男が入っていた少年野球のチームでは、みんな野球をまじめに一生懸命やっていて、チームメイトである子ども同士もお母さん同士も仲が良く、幼いMattもとても懐いていました。

だけど、チームに入るとなったら、チームメイトやお母さまがたは受け入れてくれたでしょうけど、あきらかに本人にやる気がないのに、足が速かったり、ちょっとばかり肩が強かったりするのを、Mattの性格や好きなことをよく知らない他人が見れば、「できるのに、ちゃんとやらないのは、もったいない」「なんでもっと真剣にやらせないんだ」となってしまうことが想像できたからです。