経済学者トマ・ピケティの大部の著作『21世紀の資本』が大ブームを巻き起こしたのは2014年のことだった。広範なデータに基づいて経済格差が分析されていたが、資本の収益率(r)が賃金の成長率(g)よりも大きいので資産家が労働者よりも速く富を拡大することで格差が拡大するという議論が展開され、「r>g」という関係式が有名になった。

コロナで経済格差はさらに拡大した

同著の主張である資産への課税による格差是正はさっぱり実現しなかったので、経済格差は予言通りの順調さで拡大してしまった。

その後に新型コロナウイルスが世界を襲ったが、コロナは各所で、「経済論理的には必然だがなかなか進まなかったこと」を加速する効果を持った。

身近なところでは、テレワークやオンラインの会議、副業や出向の柔軟化といった、「それで構わないし、その方が合理的な場合が大いにある働き方」があっさり実現した。これまで障害になっていた「職場の惰性」がコロナで打ち破られた。これらの変化は、すべてではないにしても、相当程度コロナ後にも定着しそうに見える。

経済格差の拡大もコロナで加速した。特に、コロナ対策としての金融・財政政策は株価の上昇をもたらし、資産家の富を急拡大した。まさに「r>g」だった。『フォーブス』誌が発表する世界富豪ランキングの2021年版では、4年連続トップであるアマゾン・ドットコムの創業者ジェフ・ベゾス氏から7位のオラクル・コーポレーションの共同設立者ラリー・エリソン氏まで資産が10兆円を超えているが、いずれの富豪も持ち株の株価上昇によって、資産をなした。

そして、新型コロナは労働者間の格差も拡大する効果を持った。こちらも、もともと存在したトレンドの後押しだ。情報技術が進むことによって、情報に関わるビジネスで有利なポジションに就いている人や、個人的な価値の高い人(いわゆる「スター」)の報酬が高まる一方、小売り販売、旅行関連、各種サービス業などでは失業が増えて、「身体を動かす労働」の賃金上昇は、はかばかしくない。