かんの・りょうじ/東京工業大学 全固体電池研究センター長・特命教授。1980年、大阪大学理学研究科無機及び物理化学専攻課程修了、同年三重大学工学部資源化学科助手。1985年、大阪大学理学博士。1989年、神戸大学理学部助教授。2001年、東京工業大学総合理工学研究科教授。2021年4月より現職。電気化学学会賞(武井賞)や文部科学大臣賞など受賞

――あまりメリットがないのですか……。

(電解質を)固体にするメリットとして期待されたのは、まず液漏れがしないことだ。有機溶媒は液漏れすると揮発性で着火して危険なので、それがなくれば電池がバッと燃えることもなくなるだろう、と考えられる。

さらに積層が可能になる。正極と負極の間の電解質が液体だと積層できない。固体にすると積み重ねることができるので、パッケージにした場合にエネルギー密度が上がるというメリットが考えられる。

電池に電流が流れる際には、電解質を介して正極と負極の間をリチウムイオンが移動する。液体の電解液ではマイナスイオンとプラスイオンの両方が動くのでリチウムイオンが実際に動いている量はそれほど大きくない。

なおかつ、電解質が液体の場合、リチウムイオンの電極と電解質の界面(境界面)での移動時の抵抗が大きい。リチウムイオンが分厚いコートを着ており、反応時にはこのコートを脱がないといけないといったことをイメージするといい。そのコートを脱ぐときの抵抗が非常に大きい。

電解質が固体になると、このコートがいらないのでリチウムイオンが速く動き、大きな電流を取れる、すなわちパワーを上げることができるのではないか、充電時間が短くできるのではないか、と考えられた。もっとも、これまで研究してきたものの、実際にはあまりメリットがなかった。

研究室ではリチウムイオン電池を超える可能性

ただ、リチウムイオン電池に使われている電解液と同等もしくはそれより低い抵抗の固体の電解質が見つかっている。そういう抵抗の低い物質を用いると、固体電池がリチウムイオン電池以上の特性を持つことができるかもしれないという状況まできた。それが現状だ。研究室レベルでは大きな電流が取れることがわかった。それをどう実用化するかでいろいろなメーカーや国家のプロジェクトがトライしている。

――固体にしたからエネルギー密度が上がるわけではなく、固体によって液体の欠陥を回避できるのでエネルギー密度を上げることができる、と理解すればよいのですか。

電池が固体になるメリットとしてはまず大きな電流が取れる。ただし、それはプロセスがそれなりに進展した場合。パワーを上げることができ、充電時間が短くなる。