――別の課題とは?

まずプロセス、製造技術の問題がある。安全性の問題もある。いったん、電池ができても実用化までにはさまざまな課題をクリアする必要がある。

――電解質が固体になれば安全になるのではないのですか。

「安全だ」と言いたいところだが、電池はエネルギーの缶詰であり、気をつけて使わないといけない。固体電池でEV用に期待されているのは硫化物系の電解質だが、硫化水素の問題もあり安全性に気を配る必要がある。

ある程度の危険は当然ある中で、材料や電池の構成などで危険を最小化する技術開発が行われている。コストをかければ解決できる問題がほとんどだと考えるが、市場で許容されるコストで安全性をクリアできるかは実用化する企業の判断になる。

リチウムイオン電池にも安全性の規格があるが、固体電池でも安全性の規格作りが必要だ。固体電池なら温度特性など安全性の基準を少し緩くできるかな、とは思う。それは期待であり、実際に大きな電池を作って危険性を潰してみないとわからない。リチウムイオン電池も、今の安全性の規格ができあがるまでにさまざまな取り組みをしてきた。

つまり、電池である以上、全固体電池であろうが安全には気をつけないといけない。電池は内部短絡(電池内部で正極と負極が接触すること)がいちばん恐ろしい。内部短絡が起こると破損や発火が起きやすい。固体電池では内部短絡の反応がマシになってほしい。

エネルギーの缶詰。ある程度の危険はある

――「全固体ならば安全」と安易に取り扱ってはいけないということですね。

その通りだ。電池はエネルギーの缶詰である以上、乾電池でも鉛蓄電池でも使い方次第では危険になる。それでも電池を使うメリットは非常に大きい。全固体電池はリチウムイオン電池より性能が非常によくなる可能性がある。安全性もその1つだ。ただし、確立するには時間がかかる。

リチウムイオン電池が実用化されたのは1991年。最初はビデオカメラに入った。その後、いろいろな製品に使われて現在は自動車にも使われるようになった。ここまでに20年から30年かかった。この間にいろいろな経験をしてきた。リチウムイオン電池はすばらしい電池だがまだ課題がある。

材料の開発は1991年からもっと前にさかのぼる。ノーベル化学賞を受賞したスタンリー・ウィッティンガム氏の研究は1976年の成果。同じくノーベル化学賞受賞の吉野彰さんたちの研究は1980年代のものだ。材料研究の期間が20年から25年。世の中に出てからさらに20年から30年かけて自動車にまで使われるようになった。電池はそれくらい進化のスピードが遅い。使い続けながらいろんな危険性を潰して安心して使えるようにしていくデバイスだ。

固体電池も似たような道をたどるだろう。リチウムイオン電池は素晴らしい電池だがこの先50年、100年を支える電池なのか。そうは思わない。では、次は何になるかというとさしあたり全固体電池に期待がある。