こうしてみると台湾防衛に向けた意思だけは、次第に整えつつある。核はもちろんミサイル、空海軍力で、中国と日本を比較するとその差は明らか。アメリカに代わって安保のハブになる能力があるとは思えない。

最後の論点は、日米安保の性格を「対中同盟」に変質させたことに対し、中国がどう反応するかである。中国共産党機関紙「人民日報」系の「環球時報」は、日米首脳会談終了直後、「日本はアメリカの邪悪な共犯者」と厳しく批判する社説を発表した。中国外務省も4月17日、首脳会談に関する談話を発表し、共同声明について「地域の平和と安定を危険にさらす『日米同盟』の性質と陰謀を認識させた」と批判。中国は「必要なすべての措置を講じる」と、対抗措置と予告した。

しかしこれまでのところ、中国外務省は日本大使を呼んで抗議をしていないし、抗議声明を出すなどの強硬姿勢は出していない。中国にとって今最大の課題は、長期化する対米闘争をいかに有利に展開し、経済発展に安定した環境を作ることにある。

中国は全面対決回避を「寸止め」

このため、米中対立が本格化する2018年以来、安倍政権への激しい批判を封印してきた。対米闘争を有利に展開するため、日本、韓国、インドなど近隣国との友好関係を重視したからである。「環球時報」が、「日本はアメリカに引きずられている」という認識に立っていることに着目したい。日本との矛盾は「副次的」であり、「敵対関係」とはみなしてはいない。

今後、中国メディアや識者が、折に触れ対日批判を展開するとみられるが、日本を引き付け日米離間を図る政策に変化はないとみていい。それが対日全面批判を「寸止め」している理由だ。

ただ中国を敵対視する共同声明を出した以上、日中平和条約で中国との友好・協力を約束し、日本の将来の経済の命運に影響を与える中国との関係を放置していいわけはない。安全保障とは、外交努力を重ね、地域の「安定」を確立するのが本来の目的であることを忘れてはならない。

頭の整理のために少しだけ、付け加える。1996年の日米安保再定義では、日米安保は第3国に向けたものではない「地域の安定の基礎」としてきたが、今回の首脳会談を受け日本は、インド・太平洋だけでなく、グローバルな舞台でアメリカとともに対中包囲網で連携することを約束した。もはや「インド太平洋」や「日米豪印4国」(クワッド)は「中国包囲のためではない」という言い訳は通用しなくなった。「安保はアメリカ、経済は中国」という政経分離がいつまで通用するのかも問われるだろう。

著者:岡田 充