「20世紀における最高の経済学書」とも言われるケインズの『雇用、利子、お金の一般理論』の入門書『超訳 ケインズ「一般理論」』がこのたび刊行された。

いわゆる「ケインズ革命」の発端となり、経済学の新常識を確立した『一般理論』は、とくに経済ショックに見舞われたときにいかに人々を救うべきか、救いえるかを私たちに伝える。

ケインズの野望と執念、そして希望が込められた同書の、いま読みとくべき意味を考察する。

経済学を彩る、革命的な「二つの奇跡」

経済学は私たちの社会に変革をもたらしてきた。それも途方もない大変化であり、いまも私たちはその恩恵に浴している。

もしいま(完全ではないにしても)自由と平等を感じながら生活ができているとすればそれは経済学由来の恩恵であるし、スマートフォンが数日のアルバイト料程度で手に入るのも、競争によって努力が報われることも、大本をたどれば経済学がもたらしたものである。

と同時に、災害時に過度に悲観的にならなくて済むようになったし、競争から不運に脱落したとしても再度のチャレンジが容易になってもいる。これも経済学の進歩が大枠を作ることによって可能にしたことだ。

そして、私たちは普段、特別に意識することがないくらいにそれは当たり前となっている。まさにこのこと自体が奇跡的なのだが、その“空気のような存在の奇跡”はいまや経済学を学ぶことによって自覚が可能となる。

“第一の奇跡“は、自由主義経済学の誕生によってもたらされた。それ以前は封建制の世の中であり、絶対王政に代表される身分制によって経済社会が運営されていた。貴族たちは領土を私有し農奴を使って農業生産を行い、王朝は保護貿易による重商主義を行っていた。生まれによって生涯のほとんどが決まってしまい、今でこそ当たり前の“自由に努力をして社会的地位を獲得する“ということが一般的にほぼ不可能だった。