5月7日に公表された4月分のアメリカの非農業部門雇用者数は、前月からプラス26万6000人と、経済活動再開でプラス約100万人とされた事前の予想を大きく下回った。

アメリカの雇用統計は株式、為替市場を動かす重要な統計であり、そして雇用最大化を政策目標としているFRB(連邦準備制度理事会)の政策にも大きな影響を及ぼす。

また、経済政策面での成果を直接表すデータであるため、政治メッセージとしてたびたび引用される。雇用統計の下振れを受けて、ジョー・バイデン大統領は「経済の崩壊からアメリカは抜け出そうとしているところだ」と述べ、就任直後から発動している拡張的な財政政策の正当性を示した。アメリカ雇用計画などの議会での審議を控えている、という政治事情がある。

一方で、同統計で注目される非農業部門雇用者の増減は単月の振れが大きいデータで、この解釈はさまざまだ。ワクチン接種が順調に進み新型コロナ感染者数が減少しているアメリカでは、3月から経済活動の制限緩和が続いている。こうした中で、4月に雇用の伸びが3月から大きく減ったというのは、他の経済統計と比べると整合的ではない。

雇用統計の下振れ要因が統計ノイズではない理由

雇用統計は平時でも年に数回はサプライズを起こすが「統計的なノイズ」が影響することが多い。さらに、新型コロナによって戦後最大の経済ショックで雇用が急激、その後の回復も急ピッチに実現しているが、これは過去に経験したことがない動きである。過去のパターンに当てはまらない経済状況の変化が起きると、季節的な変動をスムーズ化する統計的な調整(季節調整)などの処理で問題が起きるので、実態が正確に捉えられていない可能性が高い。

ただ、4月の雇用統計の下振れは「統計のノイズが最大の要因」というのは行きすぎた解釈だとみている。単月の振れをたびたび招く季節性の調整を施す変数を確認すると、2021年4月は従来からほとんど変わっていない。このため、統計のノイズが下振れの主犯とは言いがたく、他の統計を踏まえると、実際の雇用者数はプラス50万人程度増えていたと筆者は推測している。

さらに、調査対象や季節性の調整手法が異なる、家計への調査である失業率も4月に0.1%上昇(悪化)した。雇用拡大や失業率の低下の趨勢が変わったわけではないが、4月は労働市場の改善が鈍かったことを示している。