グローバル化の進展によってアジアの成長が著しいなか、国際協力のあり方はどう変化しているのか。また、中国をはじめとするアジア諸国とどう向き合っていくべきか。

前回に続き、『国際協力の戦後史』の編者である上智大学教授の宮城大蔵氏が、アジア開発銀行総裁などの要職を歴任し、日本の国際協力をリードしてきた中尾武彦氏にインタビューをして話を訊いた。

中国の台頭をどう捉えるべきか

宮城:これからの日本を考えると、発展が著しいアジアとの関係をどのように展望するかが大きな課題だと思います。中でも中国とは経済関係が深まる一方で、政治や安全保障の面では難しい問題も少なからずあります。

前回は、中国の「一帯一路」に対して、やみくもに量で対抗するといった発想は適当ではないというお話もありました。中国とどう向き合っていけばよいのか、どのようにお考えになりますか。

中尾:中国の拡張主義的な行動に対しては、安全保障面ではバランスをとる勢力均衡的な対応も必要だと思います。最近のバイデン大統領の演説でも強調している点ですが、いわば平和を守るために現状変更は認めないという立場を明確にする、そのための備えもするということです。ただ他方で、中国に関わるすべてのことについて、対抗的な言葉や発想を打ち出すことはどうかな、とも思います。

少し前に、日本が中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に入るかどうかが議論となりました。私もADB総裁時代に16回、中国に行って、毎回、財政部長(大臣)ほかと議論をしてきましたが、その中で取り上げられたこともあります。

日本が、多くの税金を使って出資をしてまで、中国がマルチというより一国で提案して作った機関であるAIIBに入らないという判断はよかったとして、AIIBを必要以上にたたく必要があるとも思いません。「一帯一路」にしても経済合理性の乏しいプロジェクトが多く、あまり成功しているとは思いませんし、それに対抗するといった発想で臨む必要はないだろうということです。

日本が議長を務めた2019年の大阪サミットでは、中国も含めた形で「質の高いインフラ投資の原則」が取りまとめられましたが、とてもいいことだと思います。環境社会配慮の重視や借り入れ国の債務の持続可能性なども入っています。

相手がやっているからすぐ対抗しなくてはならないとか、相手が何か始めたらすぐそのバスに乗らなくてはとか、そういうのではない毅然とした態度というのか、しっかりした哲学のある姿勢が必要なのではないでしょうか。中国でも、私が話を重ねてきた専門分野の高官は能力も高く、公平です。

もう一度言うと、すべての面において中国を包囲するとか、あるいは対立軸で考えるというのは、私はいかがなものかと思っているわけです。RCEP(地域的な包括的経済連携協定)にしても、インドが抜けると中国中心になってしまうという議論がありますが、もともとASEAN(東南アジア諸国連合)本位で進めているものですし、日本も大きな役割を果たしています。すべてのことを中国がヘゲモニーを握るために使われると見るのは行きすぎです。

中国の一部には、将来的には中国もTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に入るべきだという議論もあると聞きますし、私が財務官のときにもそのような可能性を言う中国の高官がいました。それはそれで前向きにとらえてよいと思うのですが。