膠着する九州新幹線西九州ルートの行方に道を開いたのは、1本の電話だった。

博多駅と長崎駅を結ぶ西九州ルートのうち、長崎駅と佐賀県の武雄温泉駅を結ぶ区間は2022年秋に開業するが、佐賀県の新鳥栖―武雄温泉間は未整備のままだ。そのため、国と佐賀県の間で同区間の整備のあり方について議論する「幅広い協議」が昨年6月にスタートした。協議は3回行われたが、新型コロナウイルスの感染拡大で昨年10月を最後に中断していた。

4月は人事の季節である。佐賀県で西九州ルートを担当する地域交流部の部長には新たに山下宗人氏が就いた。国側の担当者である国土交通省鉄道局の足立基成幹線鉄道課長は佐賀県側の担当者交代を受け、早速、挨拶の電話をした。むろん、挨拶だけで済ませるつもりはなく、協議再開を要望するつもりだった。

「早く協議をやりましょう」。電話口で協議の再開について口火を切ったのは山下部長だった。事態を進展させる必要があると考えていたのは国も県も同じだったのだ。

7カ月ぶりの協議再開

こうして約7カ月ぶりの協議が5月31日に開催されることになった。緊急事態宣言が発令中であることから、足立課長は都内にとどまり、ウェブ会議形式で行われることになった。

協議の直前、県の態度を硬化させる出来事が起きた。整備新幹線について協議する与党の検討委員会は、5月26日の会合で新鳥栖―武雄温泉間について新幹線フル規格での整備を前提とした「検討の方向性」を示したのだ。

西九州ルートは当初、軌間は在来線のまま、諫早ー武雄温泉間の線形を改良することでスピードアップを図るスーパー特急方式で決まっていたが、その後、長崎―武雄温泉間を新幹線フル規格で整備し、在来線と新幹線の両方を走行できるフリーゲージトレイン(FGT)を開発して、武雄温泉―新鳥栖間の在来線区間を走らせることになった。車両開発コストはかかるが、在来線区間の改良工事が最小限で済む。