激しい不動産争奪戦は、現在サンローランが占めている場所で8年前に起こった買収劇を思い起こさせる。2013年12月、日本経済新聞はベネトンジャパンが所有し、「ベネトンメガストア表参道」を構えていた172坪の土地を、ケリングの子会社である、不動産ファンドのケリングトウキョウインベストメントが170億円という破格の値段で買い取ったと報じた。つまり坪単価は1億円ということになる。

ケリングが超高額でベネトンの土地を買収することをいぶかしく見る向きは当時もあった。しかし、ケリングには先見の明が確かにあった。同社が2013年に購入した土地の価値は大きく上昇したのだ。土地代データによると、表参道の1坪あたりの地価(総平均)は2013年の673万578円から、2020年には同2356万5525円と、約3.5倍に跳ね上がっている。

現在サンローランの店舗がある土地は、もともとベネトンが所有していた(東洋経済オンライン編集部撮影)

「10以上のファンドが、25%のプレミアムでこの土地を購入する準備がある」と、不動産市場に詳しいある識者は話す。ケリングはこの後にも表参道に2つ目の不動産を購入し、そこに昨年10月日本本社を設立している。

「表参道はケリングとグッチやサンローラン、ブシュロンなど、すでに表参道に店舗がある傘下のブランドにとってカギとなるエリアだ」と、ケリングはプレスリリースに書いている。

同社は最近、アレキサンダーマックイーン、バレンシアガの店舗を表参道にオープンさせている。

プチバトー退去後にウブロが出店?

不動産の取り合いが激化する背景には、ケリング同様、ヨーロッパを中心とする高級ブランドの出店意欲が高まっていることがある。実際、ほかの高級ブランドグループも、この10年ほどの間に次々と所有するブランドのショップを表参道に設けている。

ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールを傘下に持つLVMHはすでに表参道の交差点近くに3つのショップ(ロエベ、セリーヌ、ジバンシィ)を構えている。複数の関係者によると、LVMHは高級腕時計ブランド、ウブロのショップを、タグ・ホイヤーの隣にある日本看護協会ビルにオープンさせたい考えだ。複数の関係者によると、10月までにプチバトーが退去し、LVMH傘下の高級腕時計ブランド、ウブロのショップがここに入ると見られている。

LVMHはプチバトー撤退後、この場所にウブロを出店する考え(東洋経済オンライン編集部)

同じくフランスの高級ブランドグループのエルメスも、今年3月に美しい店舗をオープンしたばかりだ。

一方、カルティエやヴァンクリーフ&アーペルなど高級ジュエリーブランドを所有するリシュモンだけは、まだ表参道に店舗を持っていない。「私たちは積極的にロケーション探している」とリシュモンの上層部は認めている。